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「三笘選手は憧れ。でも、僕は僕」挫折を乗り越えたドリブラー名願斗哉(18歳)は“第2の三笘”になれる?〈夢叶うJ1川崎入団〉
posted2023/01/19 11:30
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph by
YUTAKA/AFLO SPORT
岡山学芸館の優勝で幕を閉じた第101回全国高校サッカー選手権。大会の優勝候補として注目を集めた大阪・履正社で「10番」を背負ったMF名願斗哉は、5万人もの大観衆が詰めかけた特別な舞台に立つことはできなかった。
「国立での試合を見て、正直悔しかった。自分たちもあそこまで行けたはずと思いましたし、(国立のピッチで)プレーしたかったです。不完全燃焼で終わりました」
チームは惜しくも3回戦敗退。しかし、優秀選手に選ばれるなど代名詞であるドリブルからのチャンスメークは輝きを放っていた。
PK戦で敗退も、3試合で2得点3アシスト
1回戦の東邦戦で左サイドからボールを触れずにステップと上半身の動きだけで相手をかわす“ひらめき”をいきなり見せつけると、その流れからのこぼれ球を押し込んでチーム3点目を挙げた。
圧巻は6-0と大勝した2回戦の盛岡商戦。後半早々に先制点をアシストした後の48分、グラウンダーのクロスにニアサイドに飛び込んだ名願はファーサイドにいたDF西坂斗和へ右足のヒールでボールを送ってゴールにつなげると、58分の右CKではグラウンダー性のボールをニアに飛び込んだFW古田和之介の足元に寸分の狂いもなく届けて3点目をアシスト。その後のゴールにも絡み、結果6ゴール中5ゴールに絡む活躍でチームを大勝に導いた。
だが、勝てばベスト8入りが決まる3回戦の佐野日大戦では5バックを採用した相手の堅守に苦しんだ。60分に相手DFを鋭い切り返しでかわして角度のない位置から右足シュートを流し込む同点弾をマークしたが、佐野日大の堅守をこじ開けたのはこの1回だけ。高円宮杯プレミアリーグWESTでJユースに真っ向勝負を挑んできた履正社の攻撃陣は沈黙し、PK戦の末に涙を流した。
「80分間守り切ろうという相手の考え方をどう崩すかが難しかった。頭が整理できない状況でロングスローから僕の目の前ですらされてしまい、先に失点。相手を勢いにのせてしまった。本当に悔しいです」
3試合で2得点3アシスト――数字を見れば立派である。志半ば、エースとして悔しい思いは隠しきれなかったが、川崎フロンターレ内定という看板に相応しいプレーは今後の活躍を予感させるものだった。