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「投手5冠」スゴすぎた江川卓の全盛期…「スピードガン表示は140キロだから今の投手が上」は本当か? “史上最高のストレート”たる理由 

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太田俊明

太田俊明Toshiaki Ota

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photograph byBUNGEISHUNJU

posted2023/01/04 11:02

「投手5冠」スゴすぎた江川卓の全盛期…「スピードガン表示は140キロだから今の投手が上」は本当か? “史上最高のストレート”たる理由<Number Web> photograph by BUNGEISHUNJU

巨人で活躍した江川卓。ベストシーズンは「プロ3年目」だった

 2021年12月4日放送の「Going!Sports&News」(日本テレビ)の中で、ソフトバンクに様々なデータを提供しているライブリッツ社による映像解析の結果、江川が1981年のシーズン中に中塚政幸(横浜大洋)に投げたストレートの初速が158キロと計測されたのである。

 さらに、同社の解析によれば、江川のストレートのホップ成分(プロ野球の投手の平均的なストレートの軌道に比べてどれだけ高い位置でホームベースを通過するか)は、23.4センチで、比較対象となった佐々木朗希の18.6、大谷翔平の17.3、松坂大輔の15.9を大きく凌駕していることがわかった。

 このボールの軌道が落ちない=ホップするように見えるストレートを生み出す秘密が、回転数である。江川は2750rpm(回転数/分)と、佐々木の2520、大谷の2528、松坂の2583を大きく引き離している(数字はいずれも同番組から抜粋)。その点、ストレートの質は江川がプロ野球史上最高と言って差し支えないだろう。

「打者圧倒度」を田中将大と比較

 さて、いよいよ「プロ野球史上最高の投手」を争うベストシーズン成績の比較だが、オールタイムベストの稲尾和久(西鉄)は、スーパーチャンピオンとしてとりあえず神棚に鎮座してもらって、昭和後期以降のチャンピオンである2013年の田中将大(楽天)と、“沢村賞級”の成績を残した1981年の江川を比較してみよう。

【江川】登板31 完投20 完封7 勝敗20-6 勝率.769 投球回240.1 被安打187 奪三振221 与四球38 防御率2.29 WHIP0.94
【田中】登板28 完投8 完封2 勝敗24-0 勝率1.000 投球回212  被安打168 奪三振183 与四球32 防御率1.27 WHIP0.94

 両者とも凄まじい成績であることは間違いない。江川は完封数と奪三振数で田中を大きく上回り、逆に田中は勝率と防御率で勝った。

 注目すべきはWHIP(1投球回あたり何人の走者を出したか)で、0.94で全く同率。WHIPが同じで防御率がこれほど違うのは、江川が「本塁打による失点」が多いからだろう。事実、1試合当たりの被本塁打率は、江川の1.01に対して、田中は0.25。江川は実に4倍打たれている。この違いは、二人のピッチングスタイルの相違によるもので、低めにストレートや変化球を集めてゴロで打ち取る投球スタイルの田中に対して、高めのストレートで勝負する江川は一歩間違えば本塁打を食らうリスクが高いのだ。

 ではどちらが上の投手といえるのか。

【次ページ】 「打者圧倒度」を稲尾と比較

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