プロ野球PRESSBACK NUMBER
「投手5冠」スゴすぎた江川卓の全盛期…「スピードガン表示は140キロだから今の投手が上」は本当か? “史上最高のストレート”たる理由
text by
太田俊明Toshiaki Ota
photograph byBUNGEISHUNJU
posted2023/01/04 11:02
巨人で活躍した江川卓。ベストシーズンは「プロ3年目」だった
本企画では、時代によって大きく異なる数字――勝ち数や登板数、投球回、完投数――は重視しない。時代のほかに、チーム全体の攻撃力や守備力、運の要素が大きいからだ。重視するのは「打者を圧倒する力」、つまり三振を奪う力(奪三振率)、安打を許さない力(1試合あたりの被打率)、ランナーを出さない力(WHIP)である。
この3要素を比較すると、奪三振率=江川8.28、田中7.77、1試合当たりの被打率=江川7.00、田中7.13、WHIP=江川0.94、田中0.94。2勝1分となった江川に軍配を上げたい。
「打者圧倒度」を稲尾と比較
次に、昭和後期以降の新チャンピオン江川と、オールタイムチャンピオンであるシーズン42勝をあげた1961年の稲尾との勝負である。
【江川】登板31 完投20 完封7 勝敗20-6 勝率.769 投球回240.1 被安打187 奪三振221 与四球38 防御率2.29 WHIP0.94
【稲尾】登板78 完投25 完封7 勝敗42-14 勝率.750 投球回404.0 被安打308 奪三振353 与四球72 防御率1.69 WHIP0.94
先ほど田中との比較で用いた奪三振率、1試合あたりの被打率については、奪三振率=江川8.28、稲尾7.86、被打率=江川7.00、稲尾6.86。WHIPは同率なので、江川の1勝1敗1分。こうなると、その他の項目の勝利数、防御率、投球回などで圧倒的な稲尾に軍配を上げざるをえないだろう。
この結果、オールタイムチャンピオンは稲尾の防衛、昭和後期以降のパートタイムチャンピオンは江川が王座獲得となった。
次回は、2021、22年と連続して沢村賞を受賞した現在の最強投手・山本由伸(オリックス)が江川に挑戦する。
記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。