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「投手5冠」スゴすぎた江川卓の全盛期…「スピードガン表示は140キロだから今の投手が上」は本当か? “史上最高のストレート”たる理由 

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太田俊明

太田俊明Toshiaki Ota

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photograph byBUNGEISHUNJU

posted2023/01/04 11:02

「投手5冠」スゴすぎた江川卓の全盛期…「スピードガン表示は140キロだから今の投手が上」は本当か? “史上最高のストレート”たる理由<Number Web> photograph by BUNGEISHUNJU

巨人で活躍した江川卓。ベストシーズンは「プロ3年目」だった

 2年目は16勝12敗、防御率2.48、奪三振219で最多勝と最多奪三振、ベストナインを獲得。そして迎えた3年目(1981年)が、江川の9年間の現役生活の中でのベストシーズンになった。その成績を見てみよう。

●江川卓のプロ3年目シーズン成績
登板31 完投20 完封7 勝敗20ー6 勝率.769 投球回240.1 被安打187 与四球38 奪三振221 防御率2.29 WHIP0.94

 江川はこの年、最多勝利、最高勝率、最優秀防御率、最多奪三振、最多完封という「投手5冠」を達成して、巨人の8年振りの日本一に貢献。シーズンMVP、ベストナインにも選出されるなど、圧巻のシーズンを送った。

文句なしの成績も沢村賞は…

 同年の成績は、沢村賞の選考基準(25試合登板以上、10完投以上、15勝以上、勝率6割以上、200投球回以上、150奪三振以上、防御率2.50以下)をすべてクリアしており、当然江川が受賞するものと思われた。しかし結果は、ほとんどの項目で江川に劣る巨人の同僚・西本聖が受賞。その不可解な選考に対して異論が噴出した。

 これを受けて、翌年から、それまで選考を担っていた東京運動記者クラブ部長会から、沢村賞受賞者を中心としたOB投手による選考に変更されたが、江川は生涯沢村賞に縁がなかった。

ストレートは何キロ出ていた?

 全盛期の江川は、ストレートと緩いカーブという2つの球種しかなく、カーブはタイミングを外す見せ球で、基本はすべてストレート勝負だった。ストレートだけで打者を圧倒する“最後の先発完投型投手”といえるかもしれない。

 江川と対戦した落合博満、掛布雅之、バースなど、多くの一流打者たちが「現役の投手の中で一番速い。あれで、なんでリーグ戦で打たれるの」、「ストレートを狙っていても、ホップしてくるのでバットに当たらなかった」、「自分が対戦した中で最高の投手」等々、江川のストレートを絶賛している。

 では実際のところ、江川のストレートはどれほど速かったのか。江川の現役時代はちょうどスピードガンが導入され始めた時期にあたる。テレビの中継画面では、ストレートの球速が140キロ前後と表示され、やはり現代の投手に比べれば劣るとの評価が一時あった。

 ところが、最新のAIを使った映像解析技術によって、そうした評価が覆った。

【次ページ】 「打者圧倒度」を田中将大と比較

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江川卓
作新学院高校
読売ジャイアンツ

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