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「投手5冠」スゴすぎた江川卓の全盛期…「スピードガン表示は140キロだから今の投手が上」は本当か? “史上最高のストレート”たる理由
posted2023/01/04 11:02
text by
太田俊明Toshiaki Ota
photograph by
BUNGEISHUNJU
球史に残る大投手の生涯ベストシーズン成績を比較して、日本プロ野球史上No.1投手を探る旅。金田正一や田中将大、大谷翔平らに続く第7回は、「高校野球史上最高の投手」江川卓(巨人)だ。
江川が「昭和の怪物」と呼ばれるようになった高校時代。その成績は圧倒的なものだった。作新学院のエースとして2年時夏の栃木県大会で初戦から準決勝の9回まで、36回連続無安打無得点。3年時夏の県大会は全5試合に先発して、通算被安打わずか2で優勝(いずれも高校野球記録)。
2年間の合計は、9試合登板で、ノーヒットノーラン6試合(うち完全試合1)、投球回81.2、被安打6(1試合当たりの被打率0.7)、奪三振136、奪三振率15.0、自責点1、防御率0.11。この成績を上回る投手は、江川以前はもちろん、現在に至るまでいない。
ベストシーズンは「プロ3年目」
高校卒業後、江川は法政大学を経て、一度阪神に入団。その後、巨人のエースだった小林繁と1対1のトレードという異例の形で巨人に移籍した(物議を醸した1978年「空白の一日事件」)。高校野球史上最高の投手が、果たしてプロの世界でも史上最高の投球を見せてくれるのか――。余談だが、筆者は江川とほぼ同世代で、東京六大学で初登板した江川の球を初めてフェアグラウンドに打ち返すという栄誉(?)を体験している。それもあって、江川のプロ登板を今か今かと待ちわびていた。
先述の経緯からプロ1年目の1979年は開幕から2カ月間、一軍戦出場を自粛。それもあり9勝10敗という不本意な成績に留まった。それでも、この年のリーグ戦で5位に沈んだ屈辱からの復権を期す長嶋監督の“地獄の伊東合宿”に参加して、江川自身も再生に成功する。