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羽生結弦、2年前の告白「同じものをやるって、めちゃめちゃ怖い」 それでもなぜ彼は、アイスショーで“過去の名プログラム”を演じ続けるのか? 

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松原孝臣

松原孝臣Takaomi Matsubara

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photograph byAsami Enomoto

posted2022/12/15 11:00

羽生結弦、2年前の告白「同じものをやるって、めちゃめちゃ怖い」 それでもなぜ彼は、アイスショーで“過去の名プログラム”を演じ続けるのか?<Number Web> photograph by Asami Enomoto

2020年の四大陸選手権、当初予定していなかったSP『バラード第1番』を使用した羽生結弦の演技

『バラード第1番』は、2014-2015、2015-2016、2017-2018シーズンに用いている。2015-2016シーズンにはNHK杯で自身の持つ世界最高得点を更新しグランプリファイナルでさらに得点を伸ばしたほか、2018年平昌五輪での名演技も印象に残る。

『SEIMEI』は2015-2016、2017-2018シーズンに使用。2015-2016シーズンのNHK杯で史上初の200点台となる216.07点をマーク、合計得点でも史上初の300点台に乗る322.40点を記録することになった。むろん、平昌五輪の気迫あふれる演技も記憶される。

 ただ、同じプログラムを複数シーズン使用すれば、周囲の見方はシビアになっていく。変更することが明らかになったこのときも、あらゆる目線が肯定的であったというわけではなかった。

羽生「同じものをやるって、めちゃめちゃ怖いんですよ」

 それでも変更した理由は、本人の説明の通りだろう。同時に、印象的な言葉を語っている。

「むしろ、同じものをやるって、めちゃめちゃ怖いんですよ。評価の対象が自分だから」

 真摯であり誠実であればあるほど、これまでを下回る演技などするわけにはいかないと考えるし、維持することすら満足がいかない。過去を乗り越えられるかどうか、さらに進化したプログラムを披露できるか、誰よりも向き合うのは当人にほかならない。「めちゃめちゃ怖い」と言うのも不思議はない。

 それでも選択したのは、自身の技術や表現への信念が土台にあるからだ。その上に、怖くても挑戦しよう、乗り越えよう、進もうとする精神あればこそだ。そしてチャレンジの成功は、四大陸選手権の演技が雄弁に物語っている。

【次ページ】 「プロローグ」は、作品を語り継ぐ時間でもある

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