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「感動をありがとう、で終わらせないために」中村憲剛の提言…日本が“ベスト8の壁”を越えるために必要なもの「勤勉性や忠誠心だけでは…」
text by
中村憲剛+戸塚啓Kengo Nakamura + Kei Totsuka
photograph byKiichi Matsumoto/JMPA
posted2022/12/09 17:01
クロアチアにPK戦で敗れ、肩を落とす日本の選手たち。“死の組”と評されたグループEを突破したが、目標としてきたベスト8には届かなかった
クロアチアは「モドリッチ頼み」ではなかった
クロアチアのルカ・モドリッチはレアル・マドリー、マテオ・コバチッチはチェルシー、マルセロ・ブロゾビッチはインテル・ミラノに所属しています。基本的にボールを保持しながら勝利を目指すチームでプレーし、なおかつ中心選手として意思を発信する立場にある。年齢も関係していると思いますが、相手をよく見てプレーができるし、ゲームの流れも読める経験値の持ち主たちです。
それでいて、クロアチアは3人に寄り掛かっていません。日本戦の延長前半に、モドリッチとコバチッチを交代させたのには驚かされました。どちらかひとりならともかく、大黒柱を同時に下げるとは。
けれど、チームが崩れることはなかった。彼ら頼みではないのです。
現時点での日本は、相手のペースを引っ繰り返せる選手が多くありません。たとえば、「相手がこの形だから、こうしたらこの局面を打開できるな」といったイメージを、何人の選手がその瞬間、瞬間で共有して相手の守備を超えていくか。いまはまだそこにバラつきがあるため、途中で引っ掛かったり、ひとりの選手がボールを持つ時間が少し長くなったりしてしまう。長くなるとパスの出しどころを削られてしまい、相手のチャレンジが増え、ボールを失う回数も増えてしまいます。
前半の25分あたりから敵陣へ侵入できるようになりましたが、そこまではボールホルダーに選択肢を与えるための細かさがやや不足していました。パスを出した選手が受けた選手に対してもう一度サポートのポジションを取り直すとか、周りの選手がマークを外した状態でボールを受けるポジションに立つなどの動きが足りなかったのです。それでは、ボールが循環しません。
強豪国はパス回しでサボりません。必ず味方をサポートできるところにいる。周りの選手は1歩、2歩動くことで、味方の選択肢を増やすというところを突き詰めている。
日本ができていないかと言えば、そんなことはありません。良い立ち位置に立っていて、テンポも良いときは、ドイツにもスペインにもクロアチアにもボールを奪われていません。クオリティは決して低くないのです。システムや立ち位置、考え方などを含めて、どうすれば回せるのかを整理し、イメージを共有できればボールは動くはずです。