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「なぜ解説席にタマモクロスが?」『ウマ娘』4thイベントEX公演“夢の共演”を読み解く「ツルマルツヨシが“クラシック曲”を歌った理由は…」 

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寺島史彦(Number編集部)

寺島史彦(Number編集部)Fumihiko Terashima

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photograph by Cygames, Inc.

posted2022/11/30 17:01

「なぜ解説席にタマモクロスが?」『ウマ娘』4thイベントEX公演“夢の共演”を読み解く「ツルマルツヨシが“クラシック曲”を歌った理由は…」<Number Web> photograph by  Cygames, Inc.

<カノープス>が遂に集結し、「ユメヲカケル!」を歌う場面も。他の楽曲のウマ娘の組み合わせも考察していくと、さまざまな史実が浮かび上がってきた

 最も得意とする1200mということもあり、ケイエスはルビーを抑えて1番人気に推される。スプリントの頂上決戦でファンの期待を一身に背負い、迎えた直線に悲劇が待っていた。ケイエスは中団から抜群の手応えで先頭に立とうかというところで突如、バランスを崩した。ずるずると後退していく、そのすぐ脇を駆け抜けていったのが、後方からトップスピードに入ったルビーだった。そのままルビーは1着でゴール板を駆け抜け、ケイエスがゴールに辿り着くことはなく、天まで駆けていった。

名手・岡部は「あとは抜け出すだけだったのに…」

 鞍上の名手・岡部幸雄騎手は「すごく手応えはよかったんだ。さすがに走る馬だと思った。あとは抜け出すだけだったのに……」と静かにレースを振り返った。

 いかに鮮烈なインパクトを残しても、記憶は薄れ、記録もまた更新されていく。ケイエスのわずか8カ月弱の競走生活の記憶もまた、いつしか薄れていき、3つのレコードもまた塗り替えられていった。そのケイエスが『ウマ娘』によって30年の時を経て、再び脚光を浴びているのである。

 それを踏まえてライブを振り返ると、本来、同曲はゲーム内のウイニングライブでGⅠ勝利の後に歌われる楽曲ながら、3度のレコードを残して去って行ったケイエスに“Special Record”という言葉はふさわしいように思えた。そしてあの秋に鎬を削ったルビーとペアで「夢は続いてく」と歌い上げる。もしケイエスが無事なら……という歴史の“if”を想像させてくれるパフォーマンスだった。

DAY2の“黄金世代”曲で一角を担ったツルマルツヨシ

(3)ぴょいっと♪はれるや!

 ショートアニメ「うまよん」からの楽曲はスペシャルウィーク、グラスワンダー(CV:前田玲奈)、エルコンドルパサー(CV:髙橋ミナミ)、キングヘイロー、セイウンスカイ(CV:鬼頭明里)の“黄金世代”がワイワイ盛り上がる楽しい一曲。この日はオリジナルのセイウンスカイから、同じ黄金世代の一員、ツルマルツヨシ(CV:青山吉能)に。ツヨシが「よーし、三冠ウマ娘目指して私も精一杯歌うぞー!」と叫んだあとに「ゲホッ」とむせるチャーミングな一幕があったが、体は弱くても、いつも全力で前向きなウマ娘が満員の観衆で埋まった客席を大いに盛り上げた。

 競走馬としてのツヨシは歴史的なスターホースが揃った98年クラシック世代では目立たない存在ながら、潜在能力は折り紙つきだった。体質の弱さからデビューは4歳の5月。同期のスペシャルウィーク、セイウンスカイ、キングヘイローの3強が鎬を削ったクラシックや、エルコンドルパサーが制したジャパンC、グラスワンダーが有馬記念を勝った年末になっても、ツヨシはわずか3戦2勝の条件馬にすぎなかった。その後も再び休養を挟んで翌夏に900万下を勝利。条件馬のまま挑戦した朝日CCで重賞初勝利を挙げると、京都大賞典で同期のスター、スペシャルウィークを下し、檜舞台に躍り出たのである。シンボリルドルフの直仔としてはトウカイテイオー以来の逸材とも評されるようになっていた。

【次ページ】 「winning the soul」で思い出したツヨシ一世一代の大駆け

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