Number的、ウマ娘の見方BACK NUMBER
「なぜ解説席にタマモクロスが?」『ウマ娘』4thイベントEX公演“夢の共演”を読み解く「ツルマルツヨシが“クラシック曲”を歌った理由は…」
text by
寺島史彦(Number編集部)Fumihiko Terashima
photograph by Cygames, Inc.
posted2022/11/30 17:01
<カノープス>が遂に集結し、「ユメヲカケル!」を歌う場面も。他の楽曲のウマ娘の組み合わせも考察していくと、さまざまな史実が浮かび上がってきた
チーム<ブルームス>とはゲーム内の『アオハル杯』シナリオに登場するチーム名の1つで、メンバーはタイキ、マチカネフクキタル(CV:新田ひより)、ハルウララ(CV:首藤志奈)、ライスの4人。オリジナルの楽曲の歌唱では、ここにブルボンを加えた5人の構成になる。
本公演ではハルウララとフクキタルが不在。そこでキャストのフォーメーションを注視すると、キングとブライトがチーム<ブルームス>側に入っていた。
ゲーム内でキングはハルウララと同部屋、という理由で合点がいく。一方のフクキタルとブライトはというと、史実における97年クラシックの同世代、という理由が浮かび上がってくる。
ブライト、フクキタル、それぞれの“劇的フィナーレ”
Number430号(1997年11月6日号)の『大激戦の「菊」を読み解く』から当時の状況を少し振り返ってみる。
この年の菊花賞は二冠馬サニーブライアンの引退で、6年ぶりにダービー馬が不在の大混戦。そんな中ダービー7着から主役に躍り出たのがフクキタルだった。
フクキタルを管理する二分久男調教師は血統的にダービーの敗因を距離と結論付けていたという。そのため秋は菊花賞ではなく2000mの天皇賞を想定していたが、神戸新聞杯、京都新聞杯とトライアルを連勝。「秋になって、この私でも想像できないぐらい力をつけている。トライアルを二つも勝たせてもらって、本番を欠席するわけにはいかないだろう」(二分師)という急成長を見せたのがこの秋のフクキタルだった。
一方のブライトは皐月賞、ダービーと1番人気に推されながら4着、3着の惜敗。父メジロライアンが果たせなかったクラシック制覇に向け、陣営にとっても最後の一冠への思いは強かった。京都新聞杯ではフクキタルの3着に敗れたものの、「悲観?どうして?とんでもないですよ。やっぱりこの馬は相当なものなんだって、見直したところなんですから」とは、主戦を務めていた松永幹夫騎手(現・調教師)の談である。
本番では直線で好位から一瞬先頭に立ったブライトを真ん中を割ったフクキタルが強襲し、追いすがる2着ダイワオーシュウとブライトを1馬身差制して菊花賞馬の栄冠に輝くことになった。一方、3着に敗れたブライトは菊花賞後のステイヤーズSから4連勝。そして、翌春の天皇賞で念願のGⅠ勝利を手にすることとなる。
“涙の絆 ねぇ ありがとう☆ 劇的フィナーレ”という本曲の歌詞にある通り、それぞれのレースで“劇的フィナーレ”を迎えた97年世代。フクキタルの代役をブライトが務めた、という事実だけでワクワクが膨らんだのは筆者だけではないだろう。