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渡邊雄太「日本では見たことないシューター」21歳の新星・富永啓生のリアルな現在地とは? NBAに上り詰めた先駆者の言葉から紐解く
text by
杉浦大介Daisuke Sugiura
photograph byUSA TODAY Sports/Reuters/AFLO
posted2022/11/26 17:02
NCAA1部のネブラスカ大でプレーする富永啓生(21歳)。SGとしては小柄な188cmだが、特異なシュート技術に磨きをかけてNBA入りを目指す
「(課題は)まずはディフェンスですね。ディフェンス時のリバウンドのボックスアウトだったり、フィジカルの強さ。身長が高い選手を相手にした場合、自分から当てに行かないと、オフェンシブ・リバウンドを取られてしまうんで、そういうところがまだまだです。シュートに関しては、(フレッド・ホイバーグHCからは)ショットセレクションのことをよく言われます。無理に打つのではなく、開いたら打て。無理に打つところは減らして、開いているときは絶対に打てと言われています」
自身もNBAでの現役時代はシューターだったネブラスカ大のホイバーグHCは、富永のプレースタイルを認めている。そのホイバーグも無闇やたらにシュートを乱発しろと言っているのではなく、富永に与えているのは、あくまで“いいタイミングで打てる時限定のグリーンライト”だ。
好調時にはどこからでも決められるレンジの広さ、思い切りの良さは富永の魅力だが、よりいいタイミングで打てば必然的に成功率は上がる。最終的に到達するステージがどこであろうと、ここで良好なショットセレクションを叩き込まれておくことがバスケットボール人生の助けになるのは間違いない。
「僕がNBAに入れると思っていた人はいなかった」
ネブラスカ大での2年目のシーズン、富永は最初の4試合中2戦で15得点以上とまずは好スタートを切った。1年前と比べて約4キロ増えたという体重増加、ディビジョン1への慣れもあり、ディフェンスも上達した印象がある。ショットセレクションの安定も明らかで、まだスモールサンプルながら、FG成功率48.3%、3Pは38.9%と数字はその向上ぶりを示している。
今後、対戦相手の質が上がり、ネブラスカ大は苦戦が予想されるが、その中でも富永にはプレーの質を保つことが求められる。それができれば、童顔シューターの評価は確実に上がり、アメリカでもその魅力により多くの人が気づき始めるはずだ。
「僕が彼くらいの年齢の時、僕が本当にNBAに入れると思っていた人はほとんどいなかったでしょうからね……」
富永の挑戦について話していた際、ブルックリン・ネッツのロッカールームで渡邊がしみじみとつぶやいたそんな言葉は実感を持って響いてくる。
“ロングショット(大穴)”の立場から大舞台に駆け上がった先輩のように、富永もまた一歩ずつでも確実に階段を上っていけるかどうか。その挑戦が最終的にどこに辿り着くにしても、様々な意味で楽しみな素材である。日本の枠を超えた魅力を持ったシューターが、これから先も伸びやかに成長していくことを願いたいところだ。