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渡邊雄太はなぜNBAのオファーを蹴ろうとしたのか? “プライド”の裏にあった本音とは…今季ネッツで絶好調「人生何があるかわからない」
posted2022/11/22 17:05
text by
宮地陽子Yoko Miyaji
photograph by
USA TODAY Sports/Reuters/AFLO
「本当はここにユウタ・ワタナベも連れてきたかった」
今秋、さいたまスーパーアリーナでNBAジャパンゲームズが開催され、ゴールデンステイト・ウォリアーズとワシントン・ウィザーズがプレシーズン試合を2試合戦ったとき、来日したウォリアーズの関係者がそう話していた。ウォリアーズは渡邊雄太にトレーニングキャンプ参加の契約をオファーしたのだが、渡邊は同じ契約条件でも、より熱心だと感じたブルックリン・ネッツを選び、ウォリアーズのオファーは断ったのだ。
パスとシュートを主体としたチームバスケットボールと、強固なディフェンスを武器とするウォリアーズは、プレースタイルとしては渡邊に合いそうなチームだ。昨季のチャンピオンという魅力もある。しかし、渡邊はきっぱり「ウォリアーズだけはなかったですね」と言う。
それは、ジャパンゲームズを盛り上げるためのメンバー入りだと見られたくなかったからだった。
「八村塁と渡邊雄太が日本に行くってなれば、それこそもっと盛り上がるでしょうし。ただ、もしその後に僕がカットされた場合、ジャパンゲームズのために呼ばれた客寄せパンダかみたいな思われ方をされるのがすごい屈辱的だったんで。そういう見られ方はしたくなかったですね」
もしウォリアーズがジャパンゲームズに行く予定がなかったら迷ったかと聞くと、「ジャパンゲームズがなかったら、ウォリアーズ(のオファーを受けるかどうか)は多分、相当悩んだと思います」と即答した。
これが、いつカットされるかわからない崖っぷちの道を歩みながらも、4シーズンの間NBAで戦ってきた渡邊なりのプライドだった。
NBAのオファーをすべて断ろうと思っていた
世界の頂点で戦う選手たちは皆、それを表に出すか出さないかに違いはあっても、自信やプライド、不安や劣等感という感情の間で揺れ動きながら毎日を送っている。好調なら自信もわいてくるし、うまくいかない日々が続くと不安にもなる。プレッシャーに押しつぶされそうになることもある。渡邊もそうだ。
今シーズンを前に、渡邊はNBAチームからのオファーをすべて断り、下部のGリーグでスタートを切ろうと考えていた。NBAチームからオファーされたのは、どれもトレーニングキャンプ参加以降は何も保証されていない契約ばかり。それより、試合に出ることができて、中心選手としてプレーできるGリーグで改めて自分の力を証明し、アピールしようという考えだったという。
「自分の中ではほとんど心が決まってたというか。Gリーグでしっかりやり直して、またNBAに返り咲けばいいっていうふうに思っていた」と渡邊は言う。