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「同年代の選手とプレーすることは恥ずかしいこと」“アーセナル冨安健洋先生”の白熱教室…アビスパ後輩の疑問に答え続けた3日間
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byKiichi Matsumoto
posted2022/11/23 11:24
カタールW杯、日本代表ディフェンス陣のキーパーソンとなる冨安健洋。彼は古巣に自らの経験を還元していた
1つ目が、選手たちが大きな刺激を受けていたから。
例えば選手の中には、シャイで、みんなの前で発言することがほとんどない子もいる。しかし、そんな子でも練習中に手をあげ、冨安に質問していった。それだけではない。1時間半ほどの練習が終わると毎回、選手たちが冨安の前に長蛇の列を作ったのだ。それは、順番にサッカーに関する疑問を冨安に答えてもらうためだ。まるで人気予備校講師と、質問をぶつける生徒のような構図だった。
その質問に冨安が丁寧に答えていくから、列がはけるまで1時間近くかかっていたという。
冨安キャンプが終わったあとに起きた化学反応とは
アピスパのU-18に所属する池田獅大は「冨安さんは僕らの質問の内容が良いものだと『それは良い質問だね!』と声をかけてくれたりしたんです」と当時を振り返る。彼は、冨安キャンプが終わったあとに、選手たちの意識が変わったと感じられる瞬間をたびたび目の当たりにしている。
例えば、サイドアタッカーを務めるチームメイトのプレーについて。
「その選手は冨安さんから『積極的にゴールに絡んでいけ!』と言われていたんですけど、直後の試合で実際にゴールを決めていて。『あぁ、意識がさっそく変わったんだ』と感じましたね」
あるいは、紅白戦が行なわれた練習を終えて、チームメイトたちと家へ帰る道中でも、こんなことがあった。
「さっそく『あの場面では、こうできたんじゃないか?』とか、『オレがあそこにいるときには、こんなパスを出してくれよ』というような声があがっていたんです! これまでそういう話をしていなかったというわけではないのですが、紅白戦が終わったばかりのタイミングで、すぐに話し合うようなことはなかった。そういうところでも変わりました」
15、16歳で“当たり前にやらないといけないプレー”
このプロジェクトは大成功だった――と、みんなが実感した2つ目の理由は何か。それは若き選手も、指導者も、冨安が繰り返し口にした以下のメッセージに感銘を受けたからだ。
「みんなのスタンダードである『当たり前にやらないといけないプレー』のレベルを上げよう!」
アビスパの強化部兼アカデミーテクニカルアドバイザーを務める藤崎義孝は、冨安のメッセージの意義をこう解説する。