欧州サッカーPRESSBACK NUMBER
「カマダはリーダー格」「やせ細った印象は消え…」監督・ドイツ紙ベタボメ “43億円の男”鎌田大地がW杯前に見せた“90%の新境地”
text by
中野吉之伴Kichinosuke Nakano
photograph byDaisuke Nakashima
posted2022/11/12 17:02
21-22シーズンのEL優勝に続き、CL3戦連発。鎌田大地は今最も日本人フットボーラーで価値を上げた選手となった
インテリジェンスの高さは折り紙付き。ゲームの流れ、相手の狙いを素早く正確に読み取り、ポジショニングの良さとアプローチの速さで攻守に起点となるプレーを見せている。ここ数年は屈強な相手との身体のぶつけ合いでもまるで臆さず、デュエルの強さもある。
背番号15が狙いすましたスライディングでボールを奪取する姿は、いまやフランクフルトファンにとってお馴染みの光景だ。
鮮烈だった“正確でパワフルなスライディングタックル”
第10節レバークーゼン戦で印象的なプレーがあった。試合終盤、フランクフルトのCKを跳ね返し、ロングボールからカウンターへ移ろうとしたレバークーゼンの選手に対して、猛ダッシュでアプローチした鎌田が正確かつパワフルなスライディングタックルでボールを見事に奪い取ったのだ。
吹き飛ばされて転がる相手の横で、ボールをキープしながらスッと背筋を伸ばして前方を見据える鎌田の立ち姿が美しい。スタジアムのファンから、思わず「おぉ」とため息が漏れたほどだ。
ドイツの全国紙『フランクフルター・アルゲマイネ』は以前、試合後の選手評で鎌田を次のように称賛していた。
「ダブルボランチの一角で起用されてもチームプレーを充実させていた。入団当初のやせ細ったゲームメーカーという印象は消え、がっしりとした体躯で、激しいスライディングタックルを見せるなど競り合いの強さを身につけている。また、ボランチの位置からでも素晴らしいクオリティでチャンスを創出する」
フランクフルトの地元紙『ヘッセンシャウ』は「どれだけ優れた攻撃陣がいてもパスがそこに出てこなければ意味がない。だが、フランクフルトにはカマダがいる」と、称賛を惜しまない。
移籍のウワサを監督が“ストップ”をかけた
そんな鎌田は今夏、ベンフィカ・リスボン(ポルトガル)へ移籍間近と言われた時期があった。元ドイツ代表マリオ・ゲッツェの加入が決まったことで、トップ下のポジションを失い、出場機会をなくすのではないかと、地元紙は盛んに移籍を念頭に置いた紙面展開をしていた。
しかし、鎌田の移籍にストップをかけたのがグラスナー監督だったという。鎌田と腰を据えて話し合い、自身のプランと評価を丁寧に伝えた。監督は鎌田の“試合を決定づける才能”を非常に高く評価している。
ハイテンポな試合のなかでフリーなポジションを見つける能力には際立ったものがあり、類まれなボールコントロール能力と視野の広さでチャンスを次々にクリエイトし、どんな位置からでもゴールに関われる。グラスナー監督は、そうした特長を持つ鎌田にボランチでも活躍できる資質を見出したのだろう。
鎌田自身も、ボランチでのプレーに手応えを感じている。