Number World Cup ExpressBACK NUMBER
ハンバーグ→銀だら→ウナギ→カレー…日本代表の鉄板勝負メシを作り続けるシェフが、森保監督を一度だけ怒らせたある言葉とは?
posted2022/11/11 11:00
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph by
Takuya Sugiyama
サッカー日本代表の胃袋を支える心強い存在がいる。
2004年から日本代表の専属シェフとして海外遠征に帯同している西芳照、その人だ。衛生管理、栄養摂取はもちろんのこと、いくら調理環境が悪かろうとも、調理機材が壊れようとも毎回のように対応力を発揮して、美味しく、温かい料理を選手たちに提供してきた。
選手たちへの愛情とリスペクトを込めた西の料理は選手に愛され続け、せめて食事するときくらいは楽しんでもらいたいとの思いから始めた「ライブクッキング」はいつしか定番となった。ベスト16に躍進した2010年の南アフリカワールドカップ後、岡田武史監督から「シェフ一人スタッフが違っていても勝てなかった」とその貢献度を称えられたほどである。
ワールドカップへの帯同は2006年のドイツ大会から始まって今回で5回目。そしてこのカタールを最後に日本代表専属シェフからの“卒業”を考えている。
「前回のロシアで本当に辞めようと思っていたんです。でもベルギー相手に悔しい負け方をして、代表スタッフの方からも『もう1回、やりましょうよ』と言ってもらえて。だから僕にとっても集大成。僕がサッカーをするわけじゃありませんが、チームに対して食事面からできる限りのサポートをしていきたい。全身全霊を込めてやらせていただきます」
試合前の鉄板ローテーション
西には、勝負メシの“鉄板ローテーション”がある。
肉、魚、野菜とバランス良く提供されるなか、夜のディナーにはお楽しみのメインディッシュが用意される。試合3日前はハンバーグ、2日前は銀だらの西京焼き、試合前日はウナギの蒲焼、そして試合が終わった日の夜はカレーだ。意図的ではなく、自然とそうなったという。以前からあった「前日ウナギ→当日カレー」の流れとハンバーグ、西京焼きが合体して一連のセットになった。
「これじゃ選手のみなさんも飽きるだろうと思って一度崩してみたら、逆にチームのほうから『変えないでください』と言われまして。だから今回もローテーションは崩しません。決勝トーナメントに入っても、ずっと同じです」