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千代の富士に九重親方が伝えた「筋肉ピクピクさせてでも威嚇しろ!」…本人は「“パパが負けて悔しくて泣いた”と言われたらね」
posted2022/11/13 11:01
text by
NumberWeb編集部Sports Graphic Number Web
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JIJI PRESS
<名言1>
体で負けているんだから、気力では負けるな。
(九重親方/Number271号 1991年7月5日発売)
◇解説◇
北の富士勝昭さんは現在、御年80歳。大相撲テレビ・ラジオ中継で舌鋒鋭く関取を評する人気解説者だ。そんな北の富士さんは現役時代、幕内最高優勝10回を果たすなど第52代横綱として、1960~70年代の角界を大いに盛り上げた。
さらに九重親方時代に大横綱・千代の富士を育て上げたことで名伯楽としても知られている。1991年、千代の富士引退にあたってNumberのインタビューに応じてくれた九重親方。「ハンディを乗り越え、千代の富士は何故最強たりえたか」というテーマでの取材に、包み隠さず本音で語っている。
「体は小さい、そして怪我も多かったけれど、しかし、強靭なバネとか運動神経、集中力といった点で、やはり天才的なものを持っていたんじゃないですか。(中略)それに加えて研究熱心。相撲に対する集中力も凄いし、とにかく精神面が大きかったと思うんです」
「それこそ胸の筋肉をピクピクさせてでも…」
千代の富士と言えば筋力トレーニングで鍛えた圧倒的な肉体美とともに、自分よりも一回り近く大きい力士に対しても全く臆せず挑んでいく姿だった。その心技体が相撲ファンにとどまらず世間一般にも強烈な印象を与えることになったのだが、当時九重親方は「気力で負けるな」と伝えるとともに、このようにも助言していたと明かす。
「『横綱でも何でも土俵に上がったら五分と五分なんだから、うんと睨んで、それこそ胸の筋肉をピクピクさせてでも威嚇しろ。何か言われたら俺が責任をとるから、とにかくいけ』と言ってけしかけました。だからあの頃さかんに、たいして厚くもない胸をぐっとそらしてた。それでも効果があったと思いますよ」
千代の富士という存在自体で、相手を威圧する。それが圧倒的だったオーラの正体なのかもしれない。
なお千代の富士も九重親方からの教えについて、このように語っていたことがある。
「右肩まで脱臼した時、親方に、お前は、こんないい相撲を前に取ったこともあるじゃないか、それなら、肩にも負担がかからないし、いいんじゃないかと言われて、それが前まわしを取って頭をつける相撲だった」
度重なる脱臼の大ケガと向き合い、心身ともにバージョンアップさせていった取り口。それが千代の富士を“小さな大横綱”へと導くことになる。