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ドラフトウラ話…プロ野球スカウトがウンザリ「まさかの“指名漏れ”、なぜ起きた?」 大学監督は困惑「あんなに調査書も来てたのに…」 

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安倍昌彦

安倍昌彦Masahiko Abe

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posted2022/11/06 17:00

ドラフトウラ話…プロ野球スカウトがウンザリ「まさかの“指名漏れ”、なぜ起きた?」 大学監督は困惑「あんなに調査書も来てたのに…」<Number Web> photograph by JMPA

10月20日に行われたドラフト会議。異例の9球団“1位事前公表”となった一方で、有力候補の指名漏れもあった

「記者が、もっと勉強しないと。スカウト時代、スタンドで見てると、記者が聞きにきましたよ、ずいぶん。自分で評価がわからないから聞きにくるんでしょ。スカウトはこう言ってるって記事ばっかりでしょ、今も。スカウトが本当のこと言うわけないじゃない。後で関わることになったらたいへんだから、お世辞しか言わない。それをまた、そのまま書くでしょ。野球の記者でメシ食ってるんだったら、野球勉強して、自分なりの評価で記事書いてみろって。スカウト、みんなそう思ってますよ。ほんとはね」

 胸の先に、短刀を突きつけられたような思い。記者の端くれとして、襟を正し、正座をして耳を傾けるべき「叱咤」であった。

大学監督は困惑「あんなに調査書も来ていたのに」

 この秋、最後のリーグ戦で奮投を続けた投手や、ドラフト前のプロ相手のオープン戦で活躍して評価を上げた選手が、今年のドラフト指名を勝ち取った例が、いくつもあった。

「ドラフト前の秋に見に行く選手って、リーグ戦の大学生か、11月の日本選手権予選の社会人が中心なんです。高校生は夏の甲子園で終わってますから。その大学生や社会人も、どうしようかって、こっちが迷ってる選手なんですね。だから、秋の結果って、ドラフトに直結してくるんです。決める偉い人たちも人間ですから、直前の印象って、ものすごく影響されるんです。ドラフト前の肝心な時になって、グーっと状態上げてくるのも、力がある証拠でもありますから」

 昨年のこと、当落線上ぐらいだったある大学生投手が、秋の大一番で打ち込まれ、指名されなかったこともあった。

「あんなに調査書も来ていたし、まさか指名がないとは思ってもみなかったですね。本人は力不足でしたって、意外とサバサバしてますけど、こっちのほうがショックですよ、来年以降のことを考えると……」

 ドラフト直後、大学チームの監督さんが困惑していた。

「ポイントは“調査書”よりも”面談”」

「調査書が○通届いた」という新聞記事の記述。球団が指名リストに入っている選手たちに、「履歴書」代わりに個人情報を書き込んでもらって、資料にする。それを「調査書」と称して、球団はドラフト前に候補選手に送るか、足を運んで持参する。

「調査書の数が指名の可能性になるっていうのは、その通りなんですけど、あまりアテにされても、こっちも困るんですよね」

 意外なスカウト談話だった。

「同じチームに候補らしき選手が2人いたら、A君には調査書送って、B君には出さないっていうのもね……。それに、調査書もらってから、なんらかの理由で消えるってこともいくらでもあるし。同じポジションでより高い評価の選手が先に指名できたら、リストに挙げていても指名できないこともある」

【次ページ】 「ポイントは“調査書”よりも”面談”」

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