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プロ野球PRESSBACK NUMBER
オリックスのMVP男“ラオウ”杉本裕太郎が「ヒョロヒョロの青学ボーイ」だった頃…恩師が語る愛すべき「バカヤロウ伝説」
posted2022/11/07 11:01
text by
佐藤春佳Haruka Sato
photograph by
Nanae Suzuki
大逆転で26年ぶりの日本シリーズ制覇を果たしたオリックス。その攻撃陣の中心にいたのが、MVPを獲得した杉本裕太郎と主砲の吉田正尚だ。ともに青山学院大学野球部出身で、杉本が吉田の2学年先輩に当たる。当時からクリーンナップを組んでいたパワフルな二人のスラッガーの秘話を、青学大前監督の河原井正雄氏に聞いた。(全2回の1回目/#2へ)
河原井正雄氏が杉本裕太郎を初めて見たのは徳島商業高校2年だった2008年秋のこと。当時は投手だったが、高校球界では無名の存在だった。「ちょっと面白いのがいる」。そんな情報を聞いて夫人とともに徳島まで練習を見に足を運んだ。
「杉本のお母ちゃん」の姿に…
「グラウンドに向かうと、そこに野球も見ないで一心不乱に草むしりをしているおばちゃんがいたんです。とにかくそのインパクトが強くてね。何の気なしに聞いたら“あれがその杉本のお母ちゃんなんですよ”って。私はまず、お母ちゃんのパワフルな姿に惚れこんじゃったんです(笑)」
自分の息子を応援するだけでなく、チームのために学校の草むしりに汗していた母心に打たれたという河原井氏。パワフルな「杉本の母」の姿を見て、名将の勘が働いた。
「当時の杉本は、背はデカいんだけどヒョロヒョロ。今のあいつの姿からしたら想像を絶するくらいヒョロッヒョロでね。正直、投手としては全然魅力を感じませんでした。ただ、もしかして打者で鍛えたら将来的に面白くなるかもしれない。お母ちゃんの体が大きかったし、オヤジの背もデカい。鍛えて体を大きくできる可能性はある。それで、来年(青学を)受けてくれ、と約束して帰ったんです」
入学当時のサイズは身長188cmに対し体重77kg(現在は190cm、104kg)。とにかく下半身が細く、まずは体を大きくすることから取り組ませた。打者転向し打ち込んだ打撃練習では当初、金属バットから持ち替えた木製バットを何本も折った。河原井氏が何より頭を抱えたのは、その打撃の粗さだった。