- #1
- #2
サッカー日本代表PRESSBACK NUMBER
「絶対NGなのは、ハングリーさの押しつけ」塾の経営者兼サッカー代理人が考える、今の子どもたちに必要な“ロジカルな伴走”とは?
posted2022/11/03 17:01
text by
木崎伸也Shinya Kizaki
photograph by
Kiichi Matsumoto
時代が移ろい選手の価値観が変われば、指導する側も変わらなければならない――。
頭ではわかっていても、それを実行するのは簡単ではないだろう。育成現場だけでなく、Jリーグでも多くの監督が適応に苦しんでいるという話をよく聞く。
そういう新たな時代に参考になりそうなのが学習塾の視点だ。
『進学塾VAMOS』の経営と、大手代理人事務所『CAA Base』の日本担当という“二刀流”を実践する富永雄輔はこう語る。
「サッカーの指導と、塾の指導にはたくさんの共通点があると思います。トップの子どもたちに求められる資質も、どんどん近くなっている印象です」
現在、『CAA Base』は吉田麻也、シュミット・ダニエル、板倉滉、田中碧といった日本代表選手を抱えており、藤本寛也、町田浩樹、田川亨介、荒木遼太郎、齊藤未月、半田陸などカタールW杯後に日本代表の主軸になりそうな選手たちも多く所属している。
教育のエキスパートである富永に、新時代の指導法を聞いた。
根性論は、今の子どもには“絶対NG”
――子どもたちの価値観が大きく変化する中、教える側は何に気をつけなければならないと思いますか?
「絶対やってはいけないのは、ハングリーさの押しつけでしょうね。ハングリーさを植えつけようとしたり、負けず嫌いであるという前提で接したりすることは最大のNGです。
あくまで僕の感覚なんですが、開成や渋谷教育学園幕張に進学するお子さんの家庭と、Jクラブのユースでプレーする選手の家庭は、世帯年収や家庭環境がかなり似てきていると感じています。実際、僕が経営する塾には『勉強とサッカーを両立したい』という子どもがたくさん来て、Jクラブのジュニアユースから慶應義塾に進学した子がいます。
Jリーグのユースの試合に行くと、親御さんたちが外車で子どもたちを送り迎えしているのをよく目にします。昭和的なハングリーさをそういう子どもたちに求めても響きづらいでしょうね。教える側が根性論を前面に出すと、絶対に今の子どもたちは引きます」
――とはいえ、子どもたちには勉強して欲しいわけじゃないですか。どうやって勉強を促すのでしょうか?
「僕はサッカー選手にも、受験生にも、保護者にも、現在地を理解してもらうことから始めます。たとえば代理人として初めて選手と会うときに、絶対に甘い夢を持たせるようなことは言いません。それは会社からも厳命されています。代理人は一番そばにいる存在だからこそ、現実を教えなければなりません。
現在の実力から考えられるMAXの目標を設定し、そこから逆算して今何をすべきかを話す。選手たちには『あなたのサッカー人生を最適化する代理人になります』と伝えています」
――選手を勘違いさせないわけですね。