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サッカー日本代表PRESSBACK NUMBER
「東大生と田中碧は似ていますね」異色の代理人が語る、学習塾で発見した“ひとりっ子”のメリット「少子化は日本サッカーを強くする」
text by
木崎伸也Shinya Kizaki
photograph byKiichi Matsumoto
posted2022/11/03 17:00
カタールW杯のメンバーに選出されたMF田中碧(24歳)。サッカー界では少ない「ひとりっ子」である田中の素顔を代理人が明かした
――田中碧選手はルックスの良さも合わさってメディアから引っ張りだこですね。どんな人物なんでしょうか?
「僕が経営している進学塾には、東京大学の学生がたくさんアルバイトしているんですが、碧はそういう若者とすごく似ていますね。碧はもしサッカーをやっていなかったら、名門大学に普通に進学していたと思います」
――僕も一度インタビューした際、すごく賢い選手だと思いました。
「サッカーは直感的なスポーツなので、自分の意見を持っていてもうまく言語化できない場合が多く、代理人がそのお手伝いをするのが普通なんですね。代理人が選手たちの心の中に入って、考えていること・感じていることをつかみに行く作業が不可欠です。でも、碧にはそれがまったく必要ありませんでした」
――どんなところに東大生との共通点を感じるのでしょうか。
「吸収力の高さですね。中学校から開成に進んだり、大学で東大に入る人たちが優秀なことは間違いないですが、天才は一握りで、ほとんどの場合は努力なんですよ。その努力をするうえで不可欠なのが吸収力です。言い換えれば、人の話を聞ける才能ですね」
――他にも共通点がありますか?
「矢印が常に自分に向かっていることです。絶対に他人のせいにしませんから。サッカーも受験も自分に矢印を向けられるかがすべてだと思います。一人っ子だとなおさらそう。なぜなら家庭内に比較対象や競争相手がおらず、自分で反省したり自分で褒めたりしないと成長しづらい。碧は自分で尺度をつくり、自分で目標をつくれる強さを、早い段階で身につけたんだと思います」
難関校に進む子どもに“教育ママ”はいない?
――著書『ひとりっ子の学力の伸ばし方』の中で、「親が先回りして失敗を潰してはいけない」、「最初から完璧な方法を求めず、いろんなトライをしてベストに近づいて行くべき」といったことをアドバイスしていますね。田中碧のご両親と会って、何が当てはまると思いましたか?
「受験で難関校に進む子どもの親御さんは、すごく自然体で余裕があるんですよ。碧のご両親も同じでした。いわゆるテレビで取り上げられるような教育ママは、僕の感覚では1割もいないと思います。上の学校を目指す家庭ほど、子どもに自信があるし、親にも余裕がある。変な言い方ですが、普通をMAXまで持っていった感じです」
――親がつきっきりで教えるやり方ではないと。
「30年前のエリートにはその傾向が強かったと思うんです。でも今は親子鷹はかなり減っているんじゃないでしょうか。現代は受験もスポーツも、いかに外部の塾やサッカースクールを活用できるかが、子どもの成長を左右する時代だと思います」
――家庭ですべて教えるのではなく、プロの先生やコーチが指導を代行してくれる時代ということですね。
「碧自身がいろんなところで話していますが、彼はスポーツに力を入れている私立幼稚園に通っていたんですね。それによって運動に親しむことができ、ひとりっ子の環境のハンデを克服したわけです。
あとは親が自分の夢を子どもに託さないということも、ポイントになってきていると思います。昭和の時代は親の夢や親と同じことをやらすために子どもに勉強させたり運動させたりっていうのがありましたけども、今は親世代と子世代が成人するときの環境はあまりにも違う。それをよくわかっている親は、指導のプロの利用がうまい印象です。
だから今、僕はひとりっ子に大きな可能性を感じているんですよ」
――どういうことですか?