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まさか大金星? オールブラックスを追い込んだ驚異の4トライ…現地記者も「日本の”大物食いリスト”にニュージーランドが加わるだろう」
posted2022/11/02 11:01
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph by
Kiichi Matsumoto
えっ、まさか?
オールブラックスに、勝ってしまうんじゃ……。
国立競技場に65188人を飲み込んだ「リポビタンDチャレンジカップ2022」、日本代表対ニュージーランド代表の一戦は、好ゲームとなった。
自分で「好ゲーム」と書いていることが信じられないのだが、後半39分に、日本が31対35と追い上げ、あとワントライで、あのオールブラックスに勝てる――その瞬間の興奮は、筆舌に尽くしがたい。
1995年のW杯では145点を献上、4年前に東京で戦った時でさえ、31対69と完敗を喫した相手だ。
最後は及ばなかったものの、日本の評価を高めた戦いだったことに間違いはない。
オールブラックスは前半で「自由演技」モードに
この試合のターニングポイントは、前半33分にオールブラックスが21対3とリードした場面だった。オールブラックスにとって、この点差が落とし穴になった。
今回、オールブラックスは格下の日本に万が一にも負けることは許されなかった。今年に入って、ホームでアイルランドに負け越し、アルゼンチンにも敗れた(ニュージーランドのメディアは、「歴史的敗戦」と振り返る)。もしも日本に負けたとしたら、イアン・フォスター・ヘッドコーチの進退問題が再燃しかねない重大事である。
オールブラックスの面々は、3つ目のトライを奪って安堵したのだろう。手堅く攻める姿勢からパスを左右に振り、「自由演技」に入った。記者席から見て、緩んだのが分かった。
以前の日本だったら、ここで成すすべなく次のトライを献上してしまっただろう。しかし、防御網はさらなる失点を許さなかった。
9月の段階から、ジェイミー・ジョセフ・ヘッドコーチは「オールブラックス相手には、決してガードを下げてはいけない」ということを強調していた。
選手たちは、試合終了までガードを下げることなく、それを遂行するのだが、前半35分にビッグプレーが出る。FL姫野和樹のジャッカルから、アンストラクチャーのアタックに移行、最後はSO山沢拓也が相手のミスに乗じ、ボールを足に引っ掛けてトライをあげ、反撃ののろしを上げる。