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まさか大金星? オールブラックスを追い込んだ驚異の4トライ…現地記者も「日本の”大物食いリスト”にニュージーランドが加わるだろう」
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph byKiichi Matsumoto
posted2022/11/02 11:01
オールブラックス相手に4トライを奪ったラグビー日本代表。31-38で敗れるも姫野和樹(写真中央)はじめ個々のスキルとチームとしての連携が光った一戦だった
そしてこの日、最高のトライが前半40分に生まれる。ラインアウトからのアタックでリズムを作ると、キックが相手に当たって跳ね返った。これが逆にチャンスに転じる。
ボールを再獲得してから12番の中村亮土の素早いパスを、タッチライン際に控えていた13番ディラン・ライリーが受けてブレイクすると、相手を引き付けてからオフロードを完璧なタイミングでSHの流大に通し、トライ。
日本の技術が詰まった最高のトライ
このトライには、アタックコーチのトニー・ブラウンのエッセンスが感じられる。試合前、オールブラックスのレジェンド、不動の「10番」を背負っていたダン・カーターに「トニーの真骨頂」について質問していた。
「現役時代から、トニーはハートを感じさせる選手で、気持ちが強い。今はコーチとしてクリエイティブなアタックをプランニングしているよね。狭いエリアに人数を立たせたり、誰も気づかなかったことを考え、しかも精度の高いプレーを選手から引き出している」
まさにそんなプレーだった。中村のパス、狭いサイドでのライリーのスキル、そして絶妙のタイミングでフォローに走り込んだ流の判断。
日本の技術の粋が詰まったトライだった。
後半に入ってからは、「超個人技」が見られた。後半最初のトライはオールブラックスの11番、ケイレブ・クラークの圧倒的なパワーが発揮された。この選手を止めるのは、至難の業である。
しかし、日本も負けてはいなかった。後半16分、ニュージーランド生まれの2メートル1センチ、弱冠20歳のワーナー・ディアンズが相手のキックをチャージすると、そのままボールを腕の中に収め、しかも走り切ってしまった!
長らく2メートル・ロックの不在に悩んでいた日本だが、この10月の4試合におけるディアンズの成長ぶりには、ジョセフ・ヘッドコーチも目を細めていることだろう。それにしても、母国相手にトライを取ったディアンズはどんな気持ちだっただろうか。