炎の一筆入魂BACK NUMBER
打撃成績キャリアハイからのコンバート…カープ・坂倉将吾と新井新監督が痛みを受け入れ、捕手専念の決断をした理由
text by
前原淳Jun Maehara
photograph byKYODO
posted2022/10/24 11:01
10月15日に行われた新ユニホーム発表会見での坂倉(右)と新井監督。坂倉がこの場にいることはすなわち期待の表れでもある
まず、口を開いたのは新井監督だった。
「来年はキャッチャー一本。アツ(會澤翼)と競争してくれ」
坂倉は息をのみ、大きくうなずいた。
「うれしかったというか、また頑張るぞという気持ちが強かった。スッキリもしました」
その日を機に、捕手練習のメニューが一気に増えた。
「練習はきついですけど、楽しいですね。思ったように体が動かないし、感覚もすぐには戻らないのは自分でも分かっていますけど、そんなこと言っても意味がない。きつくてもやると自分に言い聞かせて頑張りたい」
ブロッキングやスローイング、キャッチング……と、ブランクを埋めるためにも技術向上にもやるべきことが山積みだ。それでも表情は明るい。
来季は捕手専任。スタメンマスクを被らない試合でも他ポジションを守らない方針だ。新井監督からも「代打で待機してもらう」と伝えられている。
捕手としての達成感
今年初めて達成した全試合出場は来季、厳しくなったと言わざるを得ない。ただ、坂倉本人は納得して受け入れている。
「新井さんも言っていましたが、今の野球で捕手が143試合全部出るのは難しいと思う。100から120試合(スタメンマスクを)被ったらレギュラーといわれるポジション。そこを僕が取れたときには、今年出た143試合より達成感が生まれると思う」
全試合出たことで得た喜びや達成感は大きかった。それでもやはり、捕手としての出場に勝るものはない。捕手をやってきたからこそ、そう思う。
「表現が正しいか分かりませんが、この2年は野球が楽しかったかと言われれば楽しくなかった。キャッチャーに専念していたときと違って、野球をしている感覚がなかった。(捕手だと)1球1球に携われるし、その1球に試合が左右される。もちろんきつくてやることも多くて、しんどい。それをやってきた身からすると……」
扇の要と言われるポジションを務めてきた自負があるからこそ、一塁や三塁で出場する試合はどこか「物足りない」。捕手から離れた2年も、捕手坂倉であり続けた。