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35歳でPBを更新した佐藤悠基が語る。「自己ベストを出すためには大きく頑張るのではなく、半歩でいい」 

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林田順子

林田順子Junko Hayashida

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photograph byTakeshi Nishimoto

posted2022/10/20 10:01

35歳でPBを更新した佐藤悠基が語る。「自己ベストを出すためには大きく頑張るのではなく、半歩でいい」<Number Web> photograph by Takeshi Nishimoto

チームメイトに「やっぱり負けたくない」

「距離に対する感覚を麻痺させて、何も考えずに長く走れる意識づけをするのが目的でした。もちろん単発なら20kmは走れます。だけど、それを毎日やり続けることは難しい。時間をかけて取り組むことで、ようやく距離に対する捉え方が変わり、軽く走るときでも15km、ポイント練習翌日などの疲労抜きでも12kmと、これまでよりも長く走れるようになりました」

 若きチームメイトの存在も良い刺激になった。

「今年は鈴木塁人が日本選手権5000mで入賞して、今季は僕よりも速いタイムで走りました。僕はマラソンがメインですが、5000mで記録を出されると『やっぱり負けたくない』って思っちゃいますよね(笑)。マラソンばかりをやっているとスピードをおろそかにしがちですが、彼らの存在のおかげでスピードに対してもしっかりアプローチをできたかなと思っています」

自己コントロールの重要性

 今年2月に行われた全日本実業団ハーフマラソンでは1時間0分46秒で自己記録を更新。東京マラソンに向けて、仕上がりは順調なはずだった。だが落とし穴は1週間後に行った40km走にあった。

「調子が良すぎたんです。体が軽くて、つい目標ペースよりも速く走ってしまった。結局本番までに疲労が抜けなくて、良い状態でスタートラインに立つことができなかった。いくら体が軽くても、しっかりと自分をコントロールして腹七分目で抑えなければいけなかったんです。せっかくいい練習をしてきても最後の調整がうまくいかなかったら、力を出し切ることができない。自分をコントロールすることの重要性を改めて感じました。これは僕ら選手もそうですが、市民ランナーの皆さんにも通ずるものだと思っていて、やっぱりマラソンの肝は『コントロール』なんですよね」

【次ページ】 積み重ねることで、確実に過去の自分より強くなる

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