プレーの向上だけでなく、今大会の日本は最後までコート内がポジティブなエネルギーであふれていた。それは眞鍋監督や川北元コーチなどスタッフ陣が作り出すカラーだ。

　選手たちに眞鍋監督の印象を聞くと、「プラス思考」や「ポジティブ」という言葉が出てくる。石川はこう話していた。

「私自身はネガティブに考えてしまいがちなんですけど、眞鍋さんは常にプラスに考える。一緒にやらせていただいて、それをすごく感じています」

出色の出来だった石川真佑（22歳）。効果的なサーブで対戦相手を大いに苦しめた　©︎FIVB

　ミドルブロッカーの山田二千華（NECレッドロケッツ）も、「プラス思考になれって、ずっと言われています」と笑っていた。

　今年の代表合宿が始まったばかりの頃、山田は眞鍋にこう聞かれた。

「例えば24－24の場面で自分にサーブが回ってきたら、どういうサーブを打つ？」

　山田は、「ミスをしないように、アンパイなサーブを打っちゃいます」と答えた。

　すると眞鍋は、もったいない、と言わんばかりの表情で言った。

「オレだったら、そんなチャンスで回ってきたら、『ここでもしサービスエースを取ったら、オレはスーパーヒーローになれる』って考える。なんでそういうふうに考えないの？」

　東京五輪の頃までの消極的な自分が嫌で、変わろうとしていた山田に、その言葉は響いた。

ブラジルを揺さぶったサーブとブロック7本

「そういう局面で力を出せる選手が、勝っていく選手なのかなと、その時にすごく感じました。『プラス思考になることによって、パフォーマンスも自然と上がってくる。気持ちの上げ方もこれからは大事だぞ』とずっと言われています。これから世界と戦っていく上で、日本はポジティブさでも海外の選手に負けないものを持っていないと、戦っていけないなとすごく思いました」

　その山田はこの世界選手権で、変化をつけながら攻めるサーブで数多くのチャンスを生み出した。1次ラウンドのブラジル戦では、第4セット12－14から、山田のサーブで揺さぶり6連続ブレイクにつなげて一気に逆転。ブラジルからの5年ぶりの勝利に貢献した。

ベスト4進出が懸かる大一番でも存在感を発揮した22歳の山田二千華（19番）©︎ANP Photo/AFLO

　スパイク、ブロックでも日に日に存在感を増し、闘志が前面に出るようになった。ブラジルとの再戦となった準々決勝では、7本ものブロックを決め、林琴奈（22歳/JTマーヴェラス）に次ぐチーム2番目の19得点を叩き出した。

【次ページ】　連敗中でも「試合ぐらい楽しめよ」