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「24-24でどういうサーブを打つ?」女子バレー眞鍋政義監督が若手に植え付ける“プラス思考” 世界4強逃すも「選手は自信を持っていい」
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph byFIVB
posted2022/10/14 17:02
若手を積極的に起用し、目標としていた世界バレー8強入り(5位)を達成した眞鍋政義監督
1年前、眞鍋を突き動かしたのは“危機感”だった。
眞鍋は2008年の北京五輪後に1度目の代表監督に就任し、12年ロンドン五輪で銅メダルを獲得。16年リオデジャネイロ五輪後に代表監督を退任して以降は、Vリーグ・ヴィクトリーナ姫路のGM、19年3月からは球団オーナーとして、持ち前のアイデアや実行力をチーム経営に注いでいた。
だが昨年の東京五輪で、日本女子は1勝4敗の予選ラウンド敗退に終わった。決勝ラウンド進出がかかった最後のドミニカ戦では選手たちの表情に不安と焦りが浮かび、1-3で敗れた。
その翌日以降、眞鍋の携帯電話にはバレー関係者からひっきりなしに電話がかかってきた。日本代表の現状への危機感を訴え、眞鍋に立て直してほしいと願う電話だった。
最初は断り続けていた。だが、ある関係者からの言葉が刺さった。
「眞鍋さん、もし女子バレーがパリ五輪に出場できなかったら、女子バレーはマイナースポーツになってしまいますよ」
「火中の栗を拾うようなもんだ」
現役時代、アトランタ五輪予選で出場権を逃した経験がある眞鍋には、この言葉は無視できなかった。代表監督への復帰が決まった直後、こう語っていた。
「東京五輪は地元開催でしたから予選を戦っていません。でも次のパリ五輪は予選を勝ち抜かなければいけない。ほとんどの選手はその経験がない。しかも東京五輪が1年延びたので、2023年に行われるパリ五輪予選まで(新チームが始動してから)1年数カ月の短い期間しかない。私は選手として2回、監督として2回、五輪予選を戦わせてもらいましたので、その経験が必要かなということで、今回5年ぶりの復帰を考えて手を挙げさせてもらいました」
ヴィクトリーナ姫路も眞鍋の背中を押した。橋本明球団社長はこう語っていた。
「眞鍋にすれば、わざわざここで(代表監督を)引き受ける必要はなかったかもしれませんし、火中の栗を拾うようなもんだという周囲の声もありました。でも我々のチーム活動も、バレーボール界全体の盛り上がりがあってこそなので、お願いをして、引き受けてもらった経緯もあります」
1年前は、選手の人材不足が懸念され、立て直しは容易でないと思われたが、林や山田など多くの選手が、起用の仕方や明確な戦術、言葉がけ次第で見違えるように存在感を発揮し始めた。古賀や島村といった経験豊富な選手を活かしつつ、伸びしろの多い若手を積極的に起用し、1年前の危機感を、期待感へと変えた。
そして誰より眞鍋自身が、現場に立ってイキイキとしているように見えることが、手応えの表れではないだろうか。
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