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「24-24でどういうサーブを打つ?」女子バレー眞鍋政義監督が若手に植え付ける“プラス思考” 世界4強逃すも「選手は自信を持っていい」
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph byFIVB
posted2022/10/14 17:02
若手を積極的に起用し、目標としていた世界バレー8強入り(5位)を達成した眞鍋政義監督
セッターの関菜々巳(東レ)も眞鍋に影響を受けた1人だ。
今年5月末から7月にかけて行われたネーションズリーグでは、開幕8連勝のあと5連敗したが、その連敗中、眞鍋はセッターの関と松井珠己(デンソー)の2人を呼び出して聞いた。
「試合、楽しいか?」
2人が考えすぎてマイナス思考に陥っているように見えていた。
関が「楽しいというよりは……」と口ごもると、眞鍋は言った。
「試合ぐらい楽しめよ。何十時間も練習して、この日のためにずっと積み重ねてきて、試合はその発表会みたいなもんなんだから。楽しむぐらいの気持ちで行けばいい」
代表でそんなふうに言われたことが関は意外だった。
「楽しみたいとは思っていましたけど、楽しんでいいのかな?というか、楽しむ前に勝たなきゃいけない、みたいな気持ちもありました。でもやっぱり自分が楽しい時が一番、結局はいいプレーができるし、バレーボールが好きでやっているから、その気持ちは忘れちゃいけないなと思いました」
セッター関「すごく自信になりました」
それでも、「楽しむのは難しい」と苦笑していた。
勝敗を握る司令塔の立場。真面目で責任感が強い関は、今大会も楽しめてはいなかったかもしれない。だが大会中のプレーや表情からは自信と余裕が感じられた。
ミドルブロッカーの島村春世(NEC)に立て続けにトスを上げて決めさせるなど、乗っている選手はどんどん使う。ネーションズリーグの時よりも、オポジット・林のライトスパイクを積極的に使い、バックアタックのバリエーションも増えたことで、レフトに偏ることなく、スパイカー全体が活きた。
準々決勝のブラジル戦のあと、「私自身この舞台でブラジルと戦えて、すごく自信になりましたし、いい経験をさせてもらった。来年のオリンピック予選に向けて、今年よりもっと強いチームを、自分自身も一緒に作っていけるように頑張りたいと思います」と正セッターの自覚を漂わせた。
今春チームが始動した時点では、エースで主将の古賀紗理那(NEC)1人が突出した存在だったが、この半年で、古賀とともにチームの軸となれる選手が増えた。今年オポジットで起用された林は攻守すべてに高いスキルと安定感を発揮し、コート内をスムーズに回す潤滑油として欠かせない存在となった。
アウトサイドの石川や井上愛里沙(久光スプリングス→サン=ラファエル/フランス)は、古賀が右足首の怪我を負い万全でない中、得点源として活躍。23歳の関や22歳の山田などポテンシャルを秘めていた若手選手が、場数と自信を積み重ねて開花した。また、アメリカ留学を経て7年ぶりに代表復帰したアウトサイドの宮部藍梨(ヴィクトリーナ姫路)は、ミドルブロッカーとして起用され新たな可能性を示した。
この短期間での変化は、来年のパリ五輪予選、再来年のパリ五輪本番に向け明るい材料となった。目標に掲げるパリ五輪のメダル獲得を実現するにはまだまだ課題はあるが、この1年で、危機感は期待感へと変わった。