スポーツ名言セレクションBACK NUMBER
〈アントニオ猪木伝説の数々〉アリ戦で借金数十億円も「バカじゃないとやらない(笑)」「媚びるくらいなら…」反骨精神の源とは
text by
NumberWeb編集部Sports Graphic Number Web
photograph byNaoya Sanuki
posted2022/10/01 17:04
燃える闘魂アントニオ猪木。79年の人生は、あまりにも濃厚だった
猪木軍対K-1軍との全面対抗戦「猪木祭」のテレビ視聴率が、NHKの紅白歌合戦の裏番組としてはトップとなる14.9%を記録したときのこと。
格闘技ブームの盛り上がりを証明したが、猪木軍の主役となるはずだった小川直也との出場交渉が不調に終わった。
「テレビ局としては、やっぱり小川直也が欲しかったんですよ。ネームバリューがあるからね。俺としても、小川に天下を取らせたかったというのが本音です」と、大会を終えた後に猪木は嘆いていた。「“いつ何時、誰の挑戦でも受ける”という姿勢でここまで支持を受けてきたんだから、今回の一件で彼が被ったイメージダウンは相当なものだと思うよ」と、愛弟子に釘を刺したのだった。
アリ戦で借金数十億円を背負っても追った夢
<名言3>
世界一というところにずっと夢があるからリスクも背負う。
(アントニオ猪木/Number681号 2007年6月21日発売)
◇解説◇
1976年6月26日、アントニオ猪木は、ボクシング世界王者のモハメド・アリと異種格闘技戦で戦った。
世紀の一戦と謳われたが、マットに仰向けになって“アリキック”を放つだけの猪木に対し、世界中から非難の声が浴びせられた。のちに、ルールでがんじがらめにされた猪木の苦肉の策であり、さらに理にかなった戦法でもあったとの評価を受けることになるのだが──この一戦で猪木は数十億円の借金を背負うことになる。
「だからある意味ではバカじゃないとやらない(笑)。カネの勘定ができたらやらないでしょう、こういうことは」
猪木の語る「夢」とは、とにかくデカいスケールだった。異種格闘技戦にマサ斎藤との「巌流島の決闘」など、誰も思いつかない突飛なアイデアを実現する。そんな猪木のスタンスに異を唱えていた前田日明に対して、こんな檄を飛ばしたこともあるという。
「夢というのは、人が物差しで計れるものじゃないんだ。1センチでも5ミリでもはみ出したものが出てきて初めて夢になる」