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「大阪桐蔭はじめ甲子園組は別世界の人」「私学とも戦える戦力に」府内屈指の超進学校も興味を示す“スーパー大連合チーム構想”とは
 

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清水岳志

清水岳志Takeshi Shimizu

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photograph byHirakata Nagisa HighSchool

posted2022/10/03 11:01

「大阪桐蔭はじめ甲子園組は別世界の人」「私学とも戦える戦力に」府内屈指の超進学校も興味を示す“スーパー大連合チーム構想”とは<Number Web> photograph by Hirakata Nagisa HighSchool

大阪府内の公立校では、枚方なぎさ高校など多くの高校が集まって合同練習をしている

 今の部活は事業的にも大規模な試合や大会がクローズアップされている。ただし、成功しているのはごく一部だと藤田が言う。

「甲子園はエンタメとして充分に成り立っている。今年から引き上げられたプロ野球並みに高い入場料でもお客さんは来るんですよ。一部だけで甲子園経済は成り立つ。だからこそ、代わる別の大会や制度を作りたいんです」

 白木原も下の層がないがしろにされているのでは、と嘆く。

「良いものはそれでやってもらっていい。でも、今のそれだけだと上の層だけが潤っている」

 商業的に成功していれば仕組みやルールは変わらない。変えなくても表層面だけで成り立つからだ。一部の選ばれた学校でストーリーが醸造され、エンタメとして完成してる感がある。言い換えれば、その他の大多数の学校について意識されていないと言えるだけに、その状況も打開しようという思いがある。

子供たちのために新しいことを始めようと

 実はすでに、藤田、白木原、磯岡らが参加するプロジェクトが立ち上がっている。民間の藤田がプロデューサー役で『7人の侍プロジェクト』という。参加者は3人に加えて東達哉(大塚高校教諭 情報科)、鷹橋秀行(大阪市立中野中学校教諭 社会科)、瑞原一道(箕面市立彩都の丘中学校首席 国語科)、宮守陽介(箕面東高校教諭 保健体育科)の計7人である。

 彼らはこれまでもオンラインセミナーなどで集まっていて、その中でも、さらなる熱を発していた改革者といえる。

 磯岡と鷹橋は中学の同級生。最年長は45歳世代、最年少が32歳の白木原と年齢バランスがよく、専門教科も化学、体育、情報、国語、社会とバラエティーに富む。8月にキックオフ会合があり、近々、NPO法人登録するための定款の概要ができつつある。

 定款資料のミッションに、こう書かれている。

〈次世代の若者たちの誰もが、自主的・自発的なスポーツ・文化活動をフェアに選択することができ、自らの自己実現に向かって成長できる環境を構築することによって、教育・地域・情報の格差がない日本の部活動文化の実現を目指す〉

 転換期として、大人の責任を果たす時だと磯岡は考えている。だからこそ最後に、こう熱く語っていた。

「教員になりたての頃は公立でも一矢報いて、センバツの21世紀枠でも狙おうと思っていた。でも今は希望も持ちにくくなっている。自分も球児やったし野球は好きやし、顧問として使命感は持ってるんで。違った形で頑張りましょうと。子供たちのために新しいことを始めようと思っています」

<#1からつづく>

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大阪桐蔭・履正社が超名門化する一方で「甲子園は別のスポーツ」「廃部の道を…」公立校顧問らが語る“高校野球格差のリアル”

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