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“監督不在の野球部”が17年で甲子園準V…下関国際・坂原監督の「弱者が強者を飲み込む野球」はいかに生まれたか？

posted2022/08/23 11:04

甲子園準優勝に導いた下関国際・坂原監督

text by

田口元義Genki Taguchi

PROFILE

photograph by

Hideki Sugiyama

　監督の坂原秀尚が選手に問いかける。

「大阪桐蔭と当たったらどうする？」

　下関国際は、2018年夏のベスト8を超えることを最大の目標として大会に臨んだ。「壁を超えるために強いチームを倒さなければならない」と選手たちには伝えていたつもりだったが、準々決勝の対戦相手が決まるまでの間に坂原がそう問うと、選手は沈黙した。

下関国際が見せた「弱者の兵法」

　キャッチャーの橋爪成が、この時のチームの雰囲気を明かす。

「監督さんから言われた時は何も答えられませんでしたが、『ここで終わったら先輩の記録と並んだだけで終わってしまうぞ』って言われてから、一段階、意識が上がったというか。相手のほうが格上で自分たちは挑戦者なので、ビビって受け身にならず、積極的に攻めて戦っていこうと」

　ショートとピッチャーを務める仲井慎も、「大阪桐蔭とやるかもしれない」という現実が、チームの士気を高めたと続く。

「勝たないとベスト8は超えられないと思ったんで、みんなで『何としても勝たないといけない』って宿舎で話しました」

　下関国際は「弱者の兵法」を見せた。

　先発の左腕・古賀康誠は本調子でないながらも丁寧にアウトを重ね、継投した右腕の仲井もインコースとアウトコースにしっかりとボールを投げ込む。守備では積極的なプレーでトリプルプレーも完結させるなど、大阪桐蔭打線に「あと1本」を許さなかった。攻撃ではバットを短く持ってタイミングを早くとり、センターから逆方向に打球を叩きつけた。この野球が実り、5-4でセンバツ王者を撃破。ジャイアントキリングを起こしたのである。

　これこそ、坂原が求めた野球だった。