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「やっちゃろうや!」最後の大勝負はエース大瀬良とともに…人情派の指揮官・佐々岡監督の選択は吉か凶か《CS争い佳境》 

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前原淳

前原淳Jun Maehara

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posted2022/09/28 11:02

「やっちゃろうや!」最後の大勝負はエース大瀬良とともに…人情派の指揮官・佐々岡監督の選択は吉か凶か《CS争い佳境》<Number Web> photograph by KYODO

カープ19代目の指揮官として、2020年からチームを率いる佐々岡監督。3年目の集大成としてCS進出はなるか

 緻密な戦略で試合を動かすでもなく、檄を飛ばして選手を奮い立たせるでもなく、選手の個々が持った能力を発揮させる。

 今年の開幕戦直前、モチベーション映像を流した演出がまさにそう。制作関係者とともに話し合いながら、好プレー集やファンが歓喜する映像、3連覇時の躍動する姿も映し出した。さらに、コロナ禍における広島の状況や無観客のスタンド……。最後には下位予想が多かった開幕戦前の評論家の順位予想とともに、「やっちゃろうや!」の文字で、広島ナインの心を奮わせた。

「見返してやろう。やってやろう。そういう思いを広島の言葉で伝えたかった」

 こだわった最後のメッセージは開幕直後、広島ナインの合言葉のようになっていた。開幕6連勝の勢いをもたらした要因のひとつと言ってもいい。

目の前の試合への執念

 ただ穏やかな性格からか人柄からか、攻守の勝負手を鈍らせることもあった。先発投手に勝ち星をつけさせたい親心から継投機を逃すこともあれば、主力がコンディション不良に陥るとチーム状況を問わずスタメンから外すこともあった。

 象徴する試合が、CS争いする阪神との直接対決となった9月14日戦の甲子園だった。8番會澤翼の適時打で1点を勝ち越した6回、なおも1死二塁。代打を送られるものとベンチに座っていた森下暢仁が、そのまま打席に立った。結果、追加点は奪えず、その裏に逆転を許してイニング途中で降板となった。

 森下は5回まで3失点と苦しい投球を続けていた。たぐり寄せた好機で追加点を奪いに行くのではなく、守りに入ったことで流れを手放したような試合となった。

 阪神との直接対決をさかのぼれば、9月1日の甲子園では、まだ3点ビハインドの6回の守備から菊池涼介をベンチに下げた。新型コロナ感染から早期復帰した影響もあったとみられる。ただ、シーズンを占う重要な3連戦をすでに2連敗していた状況もあり、チーム内には怒りにも似た戸惑いが充満していたという。

 采配は無言のメッセージとなる。練習時の優しい言葉よりも、選手の胸に響く。

 主力選手のコンディションを重視した起用も「この試合を諦めた」と意図しないメッセージに映ることもある。振り返れば、このカード3連敗が自分たちを苦しめ、阪神をよみがえらせることになった。

「目の前の試合への執念」は球団幹部も佐々岡体制に求めるもの。自ら手放したようにも思われたCS出場権は、他球団の躓きもあり、手にするチャンスが残されている。29日からのヤクルト2連戦の後、1日の休みを挟み中日との最終戦が控える。残り3試合は後先考えない、短期決戦モード。貫いた佐々岡流だけでなく、勝利至上の勝負勘と決断力が問われる。

記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。

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