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「やっちゃろうや!」最後の大勝負はエース大瀬良とともに…人情派の指揮官・佐々岡監督の選択は吉か凶か《CS争い佳境》

posted2022/09/28 11:02

 
「やっちゃろうや!」最後の大勝負はエース大瀬良とともに…人情派の指揮官・佐々岡監督の選択は吉か凶か《CS争い佳境》<Number Web> photograph by KYODO

カープ19代目の指揮官として、2020年からチームを率いる佐々岡監督。3年目の集大成としてCS進出はなるか

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前原淳

前原淳Jun Maehara

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 140試合を過ぎて、熾烈なCS争いが繰り広げられている。9月27日のゲーム終了時点で、3位に阪神と巨人が勝率も残り試合数2もまったく同じくして並び、残り3試合の5位広島が0.5ゲーム差で追う。CSがなければただの消化試合となる残り試合が、トーナメントのような緊張感をもたらしている。

 広島・佐々岡真司監督にとっては自身初、球団としては4年ぶりとなるCS進出がかかる。残り3試合となった26日の全体練習終了後、報道陣の問いかけに隠すことなく、6日先のシーズン最終戦の先発が大瀬良大地であることを明かした。

「今年もエースとして開幕を任せたので。信用して投げさせます」

 佐々岡監督が投手コーチ時代から4年連続で開幕投手を任せたエースであり、チームを背負える数少ない投手。今年は選手会長にも就任した。最終戦先発起用は至極当然の決断ではある。

 ただ、一部では状態を不安視する声があったのも事実だ。夏の盛りに調子を落とした大瀬良は、再調整のため8月13日に登録抹消され、20日間の戦線離脱。二軍での実戦登板を踏まず、9月2日に一軍復帰した。同日の復帰登板ではDeNA相手に7回無失点で勝利を収めたものの、その後の3試合は勝利なく2敗。9月23日の阪神戦では自己ワースト2位となる2回降板を味わった。

 球速や球威、精度を含めた投球内容、表情を見ても、本来の姿ではない。不調だけが理由ではないように感じる。それでも指揮官からの要請に応え、調整登板をすっ飛ばして戦列に帰ってきた。チームのため、気力で投げている。それだけに、登板6日前に監督自ら信頼の言葉を発信したことに意味がある。

 チームを背負ってきた投手であり、大きな影響力を持つ存在だ。今季も大瀬良の登板を足がかりに、チームは連勝を8回記録している。最長6連勝も大瀬良の開幕戦勝利から始まり、戦列復帰した2日の勝利からは5連勝となった。シーズン終盤の熾烈な戦いでも、チームの命運を若い投手に背負わせるわけにはいかない。

人情派監督のさまざまな気遣い

 その選択は、佐々岡流を貫いたといえる。

 広島を指揮して3年。智将や闘将という表現よりも、人情派という言葉の方がしっくり来る。

 シーズンオフにはコロナ対策を徹底した上で選手を2、3人ずつ食事会に誘い、性格を探った。練習中のグラウンドでは反省点やミスを指摘するのではなく、グルメや娯楽の話でリラックスさせた。シーズン開幕前には首脳陣、選手、スタッフ全員分のお守りを自ら授かることもあれば、コロナ禍で外食禁止が続く中でホテルの食事会場に人数分のうな重を手配することもあった。

【次ページ】 目の前の試合への執念

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#広島東洋カープ
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