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村上宗隆・大谷翔平・山川穂高らは「昔と格段に違う」「高卒でも質が高い」セパ元本塁打王が断言する“スラッガー進化の要因”とは
text by
間淳Jun Aida
photograph bySports Graphic Number
posted2022/09/15 11:02
村上宗隆、大谷翔平、山川穂高。セ・パ、メジャーで活躍する現代スラッガーについて山崎武司氏は絶賛する
選手への指導に根拠を持ち、指導法や練習法を常にアップデートしようとする指導者が増えていると感じており、このようにも話している。
「強豪校を中心に指導のレベルが断然上がって、プロの指導者と教える内容がほとんど変わらなくなってきています。プロとアマの垣根が以前より低くなり、元プロ選手がアマ球界に入っていることも大きいと思います」
意識の高い指導者の下でプレーする選手は、自然と技術が磨かれる。向上心や探究心も高まり、積極的に知識や技術を取り入れる。今の中学生や高校生にとってプロ野球選手は決して遠い存在ではなく、すぐにまねできる身近な教材となっている。
5年ほど前に日本のプロ野球で広がり出したカットボールやツーシームは、あっという間にアマチュアでも一般的な球種となった。もちろん、投球の精度はプロとアマに差はあるが、打者は高卒でプロ入りしても、プロのボールは未知ではないのだ。
“今より昔が勝っている唯一の要素”とは
山崎氏は言う。
「野球の競技人口が激減しているにもかかわらず、高卒でも質の高い選手が多いのは、個々の選手の能力が昔より上がっているからです。栄養学やトレーニングによる体づくり、練習方法など昔より今の方が優れていることばかりです。その中でも、アマチュアの指導レベル向上が選手のレベルを上げている一番の要因だと思います」
山崎氏が、今より昔が勝っている唯一の要素として挙げるのが「体をコントロールする力」。最近の選手は違和感や痛みに敏感になりすぎ、体にストップをかけるのが早すぎるという。
「怪我をする危険を考えてストップをかけるラインが、今の選手は低すぎます。それは、自分の体を理解していないのと同じです」
離脱を強いられる怪我を予防するのは大前提だが、将来を見据えて無理をしない成長期の子どもとプロは違う。痛みがない状態でプレーする試合など、ほとんどない。
山崎氏は現役時代、欠場を極端に嫌った。他の選手にチャンスを与えたくなかったからだ。レギュラーを維持する最大の方法は「打撃で結果を残すことではなく、ライバルに出場させないこと」と強調する。自分の代わりに試合に出た控え選手が活躍すれば、たちまち居場所を失うのがプロの世界なのだ。
「選手の起用を決めるのは首脳陣なので、体に痛みがあって本調子ではなくても、使いたいと思われる選手になる必要があります。自ら休むと判断すれば、チャンスを手放すことになります」
練習も同じで、怪我をするリスクが低い状態でストップをかければ、上手くなるチャンス、首脳陣にアピールする場を逃してしまう。今の選手たちが高い技術を持ってプロに入っていると感じているからこそ、山崎氏は自らの体を知り、コントロールする力を磨いてほしいと力を込める。
もう1つ、訴えていきたい“改革”
そして、もう1つ。技術の高さをプロで一層伸ばすために、訴えている“改革”がある。