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欧州サッカーPRESSBACK NUMBER
ハリルホジッチ「日本ではスポンサーのせいで問題が生じた」「自分にも罪がある」モロッコ代表監督解任後に語った“4年前との違い”とは
text by
長束恭行Yasuyuki Nagatsuka
photograph byGetty Images
posted2022/08/23 17:01
2018年4月、日本代表監督解任後に記者クラブで会見を行ったヴァイッド・ハリルホジッチ。「問題があるなら言ってほしかった」と悔しさをにじませた
10月には70歳に。激動のサッカー人生の総決算は…
現在、ボスニア・ヘルツェゴビナ代表を率いているブルガリア人指導者、イバイロ・ペテフ監督の契約は今年末まで。UEFAネーションズリーグでは現在、リーグBの首位に立っているものの、カタールW杯予選では1勝4分3敗で4位に終わり、契約延長の可能性は極めて低い。チームを長年牽引してきたFWエディン・ジェコは36歳、MFミラレム・ピャニッチも32歳となり、EURO2024予選に向けた世代交代が急がれている。現在のメンバー選出は3民族にまたがっているものの、選手の主体もサポーターの主体もムスリム人であり、代表戦の開催地もムスリム人が大多数のゼニツァに集中する。代表チームが「民族融和の象徴」となるにはまだまだ程遠い。
ハリルホジッチの出自はムスリム人だが、妻はクロアチア人で、90年代の戦争時は民族を隔てることなく援助したことで命が狙われた。そして戦火のモスタルから逃れた直後に豪邸が燃やされ、現役時代のトロフィーはすべて灰となる。フランスに渡った彼は一からの叩き上げで指導者としての名声を勝ち取り、フランス国籍も取得した。今は同国北部のリールに自宅を構えるも、母国への愛情はいまだ失われることがない。
2011年、3民族それぞれの会長を立てるボスニア・ヘルツェゴビナサッカー協会がFIFAとUEFAの「1協会1会長」の規約に反するとして加盟資格を剥奪され、国際大会の出場が危ぶまれた。その時に「正常化委員会」の委員長として民族融和とサッカー界の救済に奔走したのがイビチャ・オシムだ。彼が70歳を迎えた年の出来事で、それがサッカー人生の総決算となった。オシムと同じく波乱万丈の人生を送ってきたハリルホジッチも、今年10月に70歳を迎える。今はわだかまりを捨て、ボスニア・ヘルツェゴビナ代表監督として一大ブームを引き起こすことこそが、彼のサッカー人生の総決算にふさわしいのではないだろうか。<前編から続く>
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