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ハリルホジッチ「日本ではスポンサーのせいで問題が生じた」「自分にも罪がある」モロッコ代表監督解任後に語った“4年前との違い”とは 

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長束恭行

長束恭行Yasuyuki Nagatsuka

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posted2022/08/23 17:01

ハリルホジッチ「日本ではスポンサーのせいで問題が生じた」「自分にも罪がある」モロッコ代表監督解任後に語った“4年前との違い”とは<Number Web> photograph by Getty Images

2018年4月、日本代表監督解任後に記者クラブで会見を行ったヴァイッド・ハリルホジッチ。「問題があるなら言ってほしかった」と悔しさをにじませた

 またしても得意の仕上げをやれることなく、大会前に無職になったハリルホジッチ。それでも日本代表監督を解任された頃と同じく、複数の代表チームやクラブチームからオファーが届いている。中にはカタールW杯の出場国からの打診もあるそうだ(筆者注・イラン代表と推測)。しかしながら、モロッコ代表での解任ショックが強すぎて「今はそのオファーを引き受けられるのか、結果を出せるような準備が自分にできるのかはわからない」と消極的だ。

「モロッコの秘密をクロアチアに流すつもりはない」

 そんな中、ハリルホジッチの潔癖さを表すのが「モロッコ代表の秘密をクロアチア側に流すつもりは一切ない」と『Germanijak』のインタビューできっぱり宣言したことだ。解任の内幕が内部情報で暴かれようとも、外部から罵詈雑言を浴びようとも、ハリルホジッチに今でもオファーが絶えないのは、あくまで「チーム」に対して誠実な指導者だからだ。そこは彼を毛嫌いするアンチも認めるべきだろう。

 ボスニア・ヘルツェゴビナでもハリルホジッチを毛嫌いするアンチがいる。それも「彼はお金が大好きだから貧しい母国では監督をやらない」「彼は母国を捨てた人物だ」といった誤解によるものだ。日本代表監督の頃には金欠のボスニア・ヘルツェゴビナサッカー協会を助けるべく招待試合を主導したが、日本やモロッコがW杯出場を決めた際に母国のサッカー協会から祝福がなく、新年や祭日の挨拶状もまったく届かないことに「私は敬意を払われていない」と嘆く。そして、国内メディアは解任時に支払われる違約金「300万ユーロ」の額ばかりを大きく取り上げた。

 現役時代を過ごしたヘルツェゴビナ地域の中心都市、モスタルに今年6月下旬にふらっと帰省した彼は『Sportske.ba』の旧知の記者にこう述べている。

「もし明日死ぬのならば、ここに私は埋葬されるつもりだ。ボスニア・ヘルツェゴビナは私の国だからね。ここで起きた戦争は今でも私の心を痛めている。すべてが燃やされ、奪われ、私も一文無しになった。でも、私はこの国に忠誠を尽くしている。自分がどんな性格かわかっているよ。その性格のせいで、この国のサッカー界をぶち壊したいだけの民族主義者たちと対立することになるだろう。それもムスリム人、セルビア人、クロアチア人のいずれの民族とも。

 あまり多くを語りたくないが、何かしらの形でこの国のサッカー界を助けるつもりだ。お金は十分持っているので今さら必要ない。ただし、私がやってくるのは私が助けたいと思った時だけ。代表チームが(セルビア人地域の中心都市)バニャ・ルカや(街がクロアチア人とムスリム人で二分される)モスタルでも試合をやるようになったら、それについて話せるだろう」

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