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なぜ、フロンターレはコロナ禍でも大イベントを仕掛けるのか? ”J最強の企画屋”が明かす超攻撃的な戦略「重いバーベルを上げ続けないと…」
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph byJ.LEAGUE
posted2022/08/19 06:00
アイディア豊富な企画やイベントを次々に仕掛けて、集客にもつなげている川崎フロンターレ
「フィンランド文化でもあり現在日本でも人気だからという側面もありますが、狙いとしては川崎の銭湯利用促進のため10年以上行なっている『いっしょにおフロんた~れ』を今まで用いていない手法でさらに盛り上げるには、銭湯に併設されていることが多いサウナの認知度をもっとあげていこう、と」
――地域貢献もセットでなければならない、というのがフロンターレ流ですね。
「そうです。それとなぜフィンランドなのかと言えば、サウナという特徴だけをもった国ではなく、国連が発表する『世界幸福度ランキング1位』の国であると共に、世界有数のサスティナブルな国としても有名。SDGsにおいても見習うことがたくさんあります。我々フロンターレはSDGs活動に今までもこれからも力を入れて取り組んでいくので、フィンランドの窓口となるフィンランド大使館とは良好な関係を築き、多分野で連動していくことがフロンターレや川崎市の発展に繋がると考えています。試合時のイベントはホームゲームの集客に繋がる話題性のある面白いコンテンツに仕立てつつ、フロンターレの明るい未来を生み出すだろう企業、団体をイベントに絡め時間を共有することで関係値を高めています。イベントをハブにしてフロンターレの幅やネットワークを広げていくというのが大切なんです」
「水曜どうでしょう」コラボ企画ではチケット完売!
――ハブにして幅を広げる。たとえば6月の札幌戦は「水曜どうでしょう」とのコラボ企画もあってチケット完売になりました。コンサドーレオフィシャルサポーターの鈴井貴之さんを始球式に登場させるなど、かなり斬新でした。
「あのイベントはクラブスタッフの井川が企画立案実行まで仕切りました。『水曜どうでしょう』とのタイアップだから、スタジアムに足を運んでみようかって考えたファン、サポーターもいたと思うんですよ。フロンターレ側だけじゃなく、コンサドーレさん側も。普段なかなかスタジアムでサッカーを観ないっていう『水曜どうでしょう』ファンにも集客アプローチできた企画なんじゃないかと感じますね」
――まだコロナ禍にあるなかで、なぜこうバンバンと大きなイベントを続けて打つのか、あらためてその理由を教えてください。
「急激に(観客動員が)グッと上向くことを期待しているというわけでは実はありません。とはいえ、選手たちがリーグ3連覇を目指してピッチで戦っているのに、事業スタッフがコロナ禍を理由に戦わないという訳にはいかない。コロナ禍だから今やっても仕方ないっていう考え方だと、我々の力も落ちてしまうと思うんですよ。ここはウエイトトレーニングにちょっと似ていて、重いバーベルを挙げ続けなければ力は衰えていく。コロナ禍が終わったから、じゃあバーベルを上げようかってなっても急には上がりませんから。コロナ禍の重みもあるから大変ですよ。それでも今、歯を食いしばって上げることがやっぱり大事」
――天野さんはじめ“事業部隊”は、多少無理してでも大きなイベントを打つことにこだわってきた、と。
「それによって、みんなの力が確実についています。フィンランド関係は僕が動いていますが、ファン感謝デーや水曜どうでしょうの企画立案に僕はノータッチ。担当するスタッフにすべて任せています。スタッフは妥協せずバーベルをしっかり上げてますから。『水曜どうでしょう』だって、フィンランドだって、やることで実績が生まれるし、ネットワークが広がって、次のアイデアや次のつながりが出てくる。アフターコロナになったら、もっといろんなことがやれると思っています」
コロナ禍を言い訳にはしたくない
――コロナ禍においてはいろんな模索もあったのではないでしょうか。