Number ExBACK NUMBER
「大谷翔平の打球はまったく見えなかった」帝京前監督・前田三夫が衝撃を受けた3人の甲子園スター「東京からはああいった選手は出てこないだろうな」
posted2022/08/20 17:01
text by
前田三夫Mitsuo Maeda
photograph by
NIKKAN SPORTS
前田氏の著書『いいところをどんどん伸ばす 帝京高校・前田流 「伸びしろ」の見つけ方・育て方』より、甲子園のスターについて触れた章を紹介する(全3回の2回目/#1、#3へ)。
優れた選手というのは、走攻守にわたる野球のプレーを見なくてもわかる――。そのことを教えてくれたのが、昨年限りで現役を引退した松坂大輔選手でした。
「走る」ことの重要性
彼の球歴はもはや言うまでもないでしょう。横浜で1998年に春夏連覇を達成、その年のドラフト1位で西武に入団後は、1年目から16勝を挙げて最多勝や新人王を獲得。その後も投手として数多くのタイトルを獲得し、海をわたってメジャーリーグに挑戦したあと、22年間の現役生活を送って日米通算170勝を挙げた名投手です。
その松坂選手をはじめて見たのは、彼が中学3年生のとき。外野でランニングをしている姿を見て、「おっ、いい選手だな」と思ったものです。
「走る」ことに特別な技術は必要ないと思われがちですが、実際はそうではないのです。野球をやっている子の中にも、「野球の技術は真剣に学んで、走る技術はあえて学ばなくてもいい」と考えている子がいますが、これは大きな間違いです。
まず走るときのフォームを考えてみます。よく体がポンポン上に跳ね上がったり、左右に揺れるように走っている人を見かけますが、これでは上下、左右の動きが激しすぎて、走るためのエネルギーが逃げていってしまいます。
そのうえ上下に激しく動いた場合、足が着地した際、地面をたたきつけるようになってしまうので、一歩一歩進むごとに足への衝撃が強くなります。こうなると、走るスピードが遅くなるだけではなく、足腰にかかる負担も大きくなってしまうのです。