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栗東って読めますか? 滋賀県にある“ナゾの競馬駅”「JR栗東駅」には何がある?「53年前、滋賀の寒村に競馬トレセンが出来た深い事情」
text by
鼠入昌史Masashi Soiri
photograph bySankei Shimbun
posted2022/08/14 17:02
栗東トレセンでエアグルーヴに乗る武豊(1998年撮影)。栗東といえばトレセンが思い浮かぶが、JR栗東駅には何があるのだろうか?
新快速が停まらないことからも想像できることだが、狭いホームの対面式で橋上の改札口には駅員がいない。どうやら時間帯によっては“無人駅”になるようだ。最近こういう駅が増えているとはいえ、天下の栗東トレセンの町の玄関口が……と思うとすこし寂しい。
橋上駅舎から出入り口は東と西へ。古い航空写真を見ると、駅の周囲はほんの数十年前までほとんどまったくの田園地帯だったようだ。とりわけ駅の東口側が顕著で、市街地どころかまとまった集落のようなものもない一面の田んぼ。
じつは栗東駅の開業から約30年しか経っていない
西側も似たようなものだったが、中山道という大動脈が通っていたおかげでちょっとした集落があった。宿場町ではなかったが、701年創建と伝わる大宝神社が中山道沿いにあって、その門前町としてそれなりの賑わいがあったようだ。
なんでそんな小さな門前町がある程度の田園地帯に駅が、と思って調べたところ、そもそも栗東駅が開業したのは1991年のこと。つまりたったの30年ほど前のことで、この駅の歴史はずいぶんと浅い。お隣には草津駅という立派な駅があり、そちらは東海道線が開業したときからの駅だから、田んぼの中にわざわざ駅を設けるまでもないと思われたのだろう。
そんなかつての田園地帯の中の栗東駅も、いまでは周辺はすっかり市街地である。もともとこの一帯は大宝村という村で、西口の目の前には大宝小学校。大宝神社に向かって旧中山道を歩いて行くと、「綣」と書いて“へそ”と読むという、いかにも由緒のありそうな交差点もあった。マジメに解説すると、機織り機に装着する麻糸を巻いた糸玉のことを“綣”といい、古代この地域では麻織物が盛んに作られていたことに由来するのだとか。古い神社がある町には、やっぱりそれなりに歴史がある。
人口4万5000人→7万人に増加
対して東口。こちらは西口とはまったく違う圧倒的な“ニュータウン”。異様に立派な駅前広場の向こうには滋賀県民にはおなじみのスーパーマーケット・平和堂がどーんと鎮座し、それを取り囲むように背の高いマンションが並んでいる。とりわけ広場の南側から東に向かってまっすぐ延びている大通り沿いは、頑丈そうなマンションがいくつも連なる。