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グレートマジシャンに私たちは夢を見た…生涯わずか5戦、ダービー4着、藤沢和雄元調教師も「この馬は凄いぞ」と評した“異次元の末脚”を忘れない
posted2022/08/12 11:00
text by
田井秀一(スポーツニッポン)Shuichi Tai
photograph by
Photostud
ルメールをして「幼いけど、この馬は走る」
09年ドイツ年度代表馬ナイトマジック(09年ドイツオークス、10年バーデン大賞を優勝)の6番子として、グレートマジシャンは2018年5月7日にノーザンファームで誕生した。父は日本競馬界の至宝ディープインパクト。新潟ジャンプSを勝ったフォイヤーヴェルクなど兄姉が堅実に成績を出しており、良血として若駒時代から大きな期待をかけられて育った。ただ、3月に出産のピークを迎える日本のサラブレッド生産では遅生まれにあたる5月生まれ。2歳時は「3、4月ぐらいまでは他の馬より一周遅れている感じ」(宮田敬介調教師)だったといい、騎乗トレーニングに入るのが育成を担ったノーザンファーム早来で最も遅かったほど。同期のライバルがデビューしていく中、じっくり成長を促された。
結局、デビューは2歳の11月。その頃にはメキメキと力をつけ、調教では格上馬を圧倒する走りを見せるようになっていた。新馬戦は着差こそ2着馬に頭差と地味だったが、直線で他馬にかわされるたびに差し返す離れ業。ルメールをして「幼いけど、この馬は走る」と言わしめた。
そして、2戦目・セントポーリア賞の衝撃は競馬ファンなら覚えている方も多いのでは。出遅れのロスがありながら、のちにダービートライアルのプリンシパルSを完勝するバジオウを寄せ付けず、2馬身半差の圧勝。上がり3Fのタイムはメンバー最速の33秒3をマークしたが、同2位のバジオウが34秒2。ベールを脱いだ異次元の末脚は見る者を魅了した。ルメールの評価も「走り方はまだまだ子供っぽいが、凄くいい」とさらに期待値が上がった印象を受けた。