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なぜ札幌記念にはスター馬が集まるのか? ソダシ厩務員、エアグルーヴ調教師の証言から読み解く“5つの要因”<今年はGI馬5頭が出走予定>
text by
田井秀一(スポーツニッポン)Shuichi Tai
photograph byKeiji Ishikawa
posted2022/08/16 11:01
昨年覇者のソダシ。今年も豪華メンバーが集結するが、そもそもなぜ札幌記念にはスター馬が集まるのか。関係者の証言を集めると…
一方で、2000mだがオール洋芝コースゆえに、より長い距離に適性があるスタミナ馬も参戦する。根が細かい洋芝は保水性に富み、地面に競走馬の蹄が沈み込む(クッション値が低い)ため、走破時計がかかりやすい。東京や阪神の2000mではスピードが足りない馬でも間に合うタイムで決着するのが札幌記念。だからこそ、2400mの凱旋門賞の前哨戦として重宝されてきた。
矛盾する2点が両立する魔法のような絶妙な条件。2000mが最適距離ではないスピード馬にとっても、スタミナ馬にとっても、ごまかしがきくのが札幌の2000mなのだ。だからこそ、普段は交錯しない別路戦の馬同士も激突し、オールスター感が醸成される。
要因5:地理的なメリット
他には、猛暑にさらされる栗東、美浦トレーニングセンターと比較して快適な気候を求めて北上する馬もいるだろう。また、北海道へ放牧に出て春の激闘の疲労を癒やしていた馬にとっては、長距離輸送なしで入厩できる地理的なメリットもある。
ソダシは前走のヴィクトリアマイル優勝後、ノーザンファーム空港牧場(苫小牧市)へ放牧に出た。今回はレース約1カ月前に放牧先から函館競馬場へ移動し、調教メニューをこなしている。同馬を担当する今浪隆利厩務員は「体がふっくらした状態で放牧から帰ってきたので調整しやすい」とその恩恵を語る。
日本最大の馬産地である北海道にGIがあってもいいのでは
札幌記念には、以上の複合的要因から“スーパーGII”と呼ばれるような豪華メンバーが集結する。GI馬5頭の出走は今年の大阪杯(4頭)より多く、近3年間の平均レースレーティング117.42はGI以外では堂々の首位。日本グレード格付け管理委員会が定める、GI昇格条件「過去3年間に実施された競走の最終レースレーティングの平均値が115を満たすこと」などは悠々とクリアしている。
最もGIに近いGIIに格上げを待ち望む声が上がるのは至極当たり前のことなのかもしれない。ただ、札幌競馬場の施設面での入場人員のキャパシティーの問題、GI乱立による希少価値の低下、秋のGI戦線のメンバーが手薄になる恐れなど、反対意見も理解できる。筆者個人は「日本最大の馬産地である北海道にGIがあってもいいのでは」なんて考えるタチだが、何はともあれ、札幌記念がGIだろうとGIIだろうと、今年も珠玉の好カードであることに変わりはない。さまざまな狙いで北の大地に集まるスターホースたちの競演を心待ちにしよう。
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