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なぜ札幌記念にはスター馬が集まるのか? ソダシ厩務員、エアグルーヴ調教師の証言から読み解く“5つの要因”<今年はGI馬5頭が出走予定> 

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田井秀一(スポーツニッポン)

田井秀一(スポーツニッポン)Shuichi Tai

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photograph byKeiji Ishikawa

posted2022/08/16 11:01

なぜ札幌記念にはスター馬が集まるのか? ソダシ厩務員、エアグルーヴ調教師の証言から読み解く“5つの要因”<今年はGI馬5頭が出走予定><Number Web> photograph by Keiji Ishikawa

昨年覇者のソダシ。今年も豪華メンバーが集結するが、そもそもなぜ札幌記念にはスター馬が集まるのか。関係者の証言を集めると…

要因2:凱旋門賞の前哨戦として

 14年には桜花賞馬ハープスターと宝塚記念連覇中だった現役最強ゴールドシップが激突。ともに参戦目的は同じで、凱旋門賞の前哨戦の位置づけだった。

 札幌競馬場の芝コースはオール洋芝。寒冷な気候に強い洋芝のみのコースは、JRAでは函館、札幌の2場のみだが、欧州の競馬場では主流。海外遠征前に洋芝の適性を確かめる、また洋芝に慣れる目的で札幌記念を使う陣営も多い。近年では19年1着ブラストワンピース、3着フィエールマンが凱旋門賞前に出走した。09年にはブエナビスタがヤマニンキングリーの2着に敗れ、凱旋門賞挑戦プランを断念したケースもある。

要因3:絶妙な開催時期

 路線決定の試金石や海外遠征の足がかりとしての利用価値の高さの他に、近年のローテーションの組み方の変化も、札幌記念のハイレベル化に拍車を掛けている。2021年、芝GIにおける前走からの間隔別成績は以下の通り。

 連闘=出走なし

 中1週=【0・0・0・7】 勝率0% 複勝率0%

 中2週=【2・4・1・57】 勝率3.1% 複勝率10.9%

 中3週=【3・3・4・53】 勝率4.8% 複勝率15.9%

 中4~8週=【10・12・9・132】 勝率6.1% 複勝率19.0%

 中9~24週(2カ月~半年)=【6・2・8・44】 勝率10.0% 複勝率26.7%

 中25週(半年)以上=【1・1・0・2】 勝率25.0% 複勝率50.0%

「競走馬は消耗する」という考えが浸透し、なるべくレース間隔を空けるローテーションが好まれるようになった。そして、それが結果に結びついている。外厩施設や調教技術の進歩で叩き台が必要なくなったのも理由の一つだろう。たとえば、札幌記念→天皇賞・秋なら中9週の調整期間を確保できる。

 天皇賞を秋の最大目標に据えるジャックドールの藤岡健一調教師は「天皇賞を勝つため、その前にどこを使うかを考えて、札幌記念なら本番まで十分に間隔が取れるので」と参戦理由を明確に説明する。絶妙な開催時期もまた、トップホースを呼び込んでいる。

要因4:小回りコースの2000mという条件

 時期が絶妙なら、条件も絶妙だ。2000mだが直線が短く平坦な小回りコースゆえに、マイル寄りに適性があるスピード馬が参戦する。20年ノームコア、21年ソダシはともにマイルのGI馬。16年にはマイルの絶対王者モーリスが参戦(2着)。札幌記念を2000m路線への転向の出発点とし、天皇賞・秋→香港カップ連勝につなげた。実質的に2000mが長い馬、もしくは長いかもしれない馬でも走れてしまうのがこの舞台である。

【次ページ】 要因5:地理的なメリット

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