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オリンピックへの道BACK NUMBER
「スーツの時はだいたいペーズリー柄のネクタイで遊んでいます」町田樹が明かす衣装へのこだわり「フィギュアスケートのベスト3を挙げるとしたら…」
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byAsami Enomoto
posted2022/08/08 11:04
テレビ収録も兼ねていたこの日はフォーマルスタイルの町田。フィギュアスケーターとしての衣装を中心に話を聞いた
「私、数えてみたんですよ。自分がシニアに上がったときからプロスケーターを引退するまでにいくつのプログラムを演じてきたのか。そうすると、30くらいでした。ということは、必ず30着はあることになります。しかも1つのプログラムに対して2着、3着作ることもありましたから、それ以上の数になるでしょう。ただ演技をしないと着用しませんから、タンスで保管するしかないわけです。再利用するのが難しい資料というか。衣装展のように衣装そのものにフォーカスがあたる企画展も数年に一回行われていますが、これも限られた選手のものだけです。本来であれば日本でもフィギュアスケート博物館みたいな機関を設けて、きちんと管理して展示できるようなアーカイブがあってもいいと思うのですが」
アーティスティックスポーツでは、アーカイブは必要不可欠
ことは衣装に限った話ではない。
「とりわけフィギュアスケートや新体操のようなアーティスティックスポーツでは、アーカイブは必要不可欠です。なぜならば私たちというのは0からものを創造することはありえません。先人たちが築いたものを参考にさせていただくからこそ、よりよいものを作ることができます。まさに芸術の歴史はそうして発展してきました。『こういう演技があってこういう芸術性がスケーターによって表現されたんだ』という歴史を参考にし、自分の良さも取り入れながら新しい作品、よりよいものが生み出せるのです」
次世代のアスリートのためにも演技の映像のアーカイブは重要なのだ。町田はこう訴える。
「アーカイブはスポーツの文化性を発展させるためにも重要ですし、日本の、特にトップアスリートのパフォーマンスには多かれ少なかれ公的資金が投入されています。公的資金によって育まれたパフォーマンスは公共性を有するものであり、博物館の中であれば無料で公開するなど、広く一般に還元されてしかるべきです」
自身を育んだ背景を土台として研究の道に進み、そこで数多くの問題に行きあたって解決策を模索する。そのためには多彩な活動を手がける。その根幹には、研究者たる町田樹の使命感があった。
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