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オリンピックへの道BACK NUMBER
「スーツの時はだいたいペーズリー柄のネクタイで遊んでいます」町田樹が明かす衣装へのこだわり「フィギュアスケートのベスト3を挙げるとしたら…」
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byAsami Enomoto
posted2022/08/08 11:04
テレビ収録も兼ねていたこの日はフォーマルスタイルの町田。フィギュアスケーターとしての衣装を中心に話を聞いた
「プラスアルファで、大事なのは肉体美ですね。フィギュアスケートも舞台で身体をさらすものですから、肉体美も見せ方の1つとして考えなければいけないものだと思います。衣装の力で身体の美しさを際立たせたり、スタイルの弱点や、コンプレックスに思っているところをカバーする、そういう衣装づくりを行うことでスケーターの美しい身体こそを衣装の一部にすることもできるわけです」
数々の衣装の中から、3つ選ぶとしたら?
競技者、あるいはプロスケーターとして町田はこれまで数々の衣装を用いてきた。その中であえて「3つ選ぶとしたら」と尋ねた。
「1つは『第九』です」
2014-2015シーズンのフリーで使用したベートーベン『交響曲第九番』の衣装を1つ目にあげた。
「いろいろな意味合いを込めた私の競技者人生最後の衣装ですけれども、星座も配してプログラムのコンセプトである宇宙というものを衣装にそのまま溶け込ませています。第九のシラーの詩にバッカスが出てくるのですが、お酒の神様・バッカスを象徴する葡萄の装飾も施しました。これはすごく小さくて、実は観客からは見えず、着ている私にしか分かりません。そのため、この葡萄は見せるための装飾ではなく、私自身がどういう思いで演技をしなければいけないかを思い起こさせてくれる、演者としてのスイッチを入れるためのお守りのようなものなのです」
2つめにあげたのはプロスケーターとして2017年に披露した『ドン・キホーテ ガラ 2017:バジルの輝き』だった。
「最初、黒いベストで登場してプログラムが大団円を迎えるときにエンジのベストに着替えるという演出を盛り込みました。早着替えみたいな演出をプログラムに取り込んだのは初めてです。新しいことをした衣装として思い出深いですね」