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全日本5連覇を遂げた卓球界の天才。
21歳の水谷が持つ“驚異的な自信”。
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byKeisuke Koito/PHOTO KISHIMOTO
posted2011/02/03 10:30
昨年からトレーニング機材を部屋に持ち込み筋力強化に励み、心理学の本も読み始めたという水谷隼。5連覇達成後に「卓球で1番大切なのは自信」と語った
まずは順風満帆。
現在21歳の水谷隼を見ていると、そう思いたくなる。
先日の卓球全日本選手権シングルスで、男子史上初の5連覇を遂げた。だがその栄冠は一端にすぎない。
キャリアを振り返れば、数々の勲章に彩られている。
静岡県磐田市出身の水谷は、5歳で卓球を始めた。小学1年のときには、全日本選手権の小学2年生以下の部で2位となり、注目を集めた。
その後も年代別の大会で好成績を残し続け、中学に進学後、青森山田中学に転校する。トップ選手を次々に輩出する名門である。そこで寮生活を送りながら練習に励んだ水谷は、中学2年のときに出場した2004年1月の全日本選手権のジュニアの部で史上最年少優勝を遂げ、さらに一般の部でも、世界選手権日本代表らを破り、ベスト16入りを決めた。
'05年には15歳10カ月という日本男子史上最年少(当時)で世界選手権日本代表となり、同年のアジア選手権で当時世界ランク4位の中国の選手を破る金星。
'08年の北京五輪では団体5位に貢献。'09年には世界選手権ダブルスで銅メダル。昨年12月には国際卓球連盟のプロツアー「グランド・ファイナル」のシングルスで日本選手として初優勝。今年1月に発表された世界ランキングで7位に浮上しての全日本選手権5連覇であった。
「誰よりも練習している」という自負が強気な言葉を支える。
こうした経歴を歩いてきた水谷は、天才と評されることもしばしばあった。
中学生の頃から見せていた、簡単には体勢が崩れない優れたバランス感覚、際立ったボールへの反応の速さは、天性のものと言ってよいし、他の要素も卓球への適性の高さで群を抜いている。欧州の卓球関係者からも、評価されるゆえんである。
水谷は、発言や主張がハッキリしている選手でもある。全日本選手権優勝後、こう語っている。
「みんな僕の優勝を疑っていなかったので、できるだけ簡単に優勝したかったです」
準々決勝で対戦した丹羽孝希については、「若い芽はつぶさないと」とも宣言している。
強気とも取れるが、それも裏づけあっての言葉だ。