Number ExBACK NUMBER
ジャイアント白田「大食いはボクシング。殴り合いなんです」ガチすぎるフードファイターが大食いを諦めた日「もう僕の時代じゃないなと」
text by
荘司結有Yu Shoji
photograph byShiro Miyake
posted2022/07/27 11:01
現在は引退して、バラエティを中心に活動するジャイアント白田。現役時代の“ガチっぷり”がすごかった
「大食いはボクシング。ガチの殴り合い」
白田や小林尊、射手矢侑大ら「大食い第2世代」のスター選手の登場によって、平成の大食いブームは一気に加熱。多くのフードバトルで死闘を繰り広げるなか、白田は競技大食いのアスリートとしての自意識を高めていくことになる。
「僕のテンションとしては大食いはボクシングというか、ガチの殴り合いなんですよね。よくテレビ番組はドラマ仕立てにしようとするけれど、勝った負けた以外に一体何が必要なんだと。
試合会場でベラベラ喋って楽しんでる子たちもいましたけど、自分の胃の容量をさらすなんて手の内明かしてるようなもんじゃないですか。まあ僕にとってのライバルは尊くんと射手矢、山本卓弥、絶頂期の菅原初代さんの4人だけでしたけど。あとは興味なかったですね」
そう強気で言い切れるのも、第2世代をけん引した実績とストイックなトレーニングゆえだろう。一時代を築いた白田が現役中にこだわったのは「大食いの競技化」だ。自らがアスリート的姿勢で臨むだけでなく、番組サイドにも徹底したルールを求めていた。
「ザックリした大会だと、一杯200グラムのカレーと言いながら、それはライスだけの重さで、実際の総重量は300グラム超えとか結構あるあるだったんです。作り方も目分量。でも、一杯あたり50gの些細な誤差だったとしても、10杯20杯と食べ続けたら、結果的に1キロレベルの違いになるじゃないですか。
勝負が発生するときは『これちゃんと量ってます?』ってしつこく聞いたり、調理現場まで行って自分で量ったり(笑)。面倒くさがられることもあったけど、そこまでやらないならこっちも出ないし、っていうテンションでしたね。大学生でデビューしてちょっと天狗になっていたのもあって、もう言いたい放題でした(笑)」
ただの“おもしろ企画”から競技になっていった
話題性を求めるがあまり、時には無理難題なオファーを持ちかけられることもあったという。「大食いとして成り立たない企画は受けない」と潔く断るのも、白田のプロ根性ゆえだ。
「酷かったのは満漢全席(※100品以上の豪華絢爛な中国料理。通常は2、3日かけて食べる)を一人で食べてくれとか。総重量なんぼやと聞いても調べていないんです。結果的に30キロもあって物理的に無理やろと。フードファイター5人で商店街の食べ物100キロを全部食べつくしてくれとかもありましたね」
次第に番組の制作段階から関わるようになり、厳密な計量ややらせNGといったルールが浸透するようになった。“おもしろ企画”だった大食いは徐々に競技性を帯びていった。
「大食いって奇人変人の集まりじゃないですか。『うわいっぱい食べてる、すげー』みたいな、びっくり人間のような見せ方だったんです。記録や計量をきっちりやろうと競技性を持たせて、選手たちもアスリートのような見せ方に変えられたのは、僕らの力が大きかったように思いますね」