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「“沖縄、最弱”と言われても仕方ない」RIZINでの地元勢惨敗に砂辺光久も嘆き… それでも“具志堅用高から続く格闘技熱”は冷めず
posted2022/07/11 17:00
text by
布施鋼治Koji Fuse
photograph by
RIZIN FF Susumu Nagao
「これだと“沖縄、最弱”と言われても仕方ない」
中務修良に1RTKO負けを喫した砂辺光久は天を仰ぎながら呟いた。7月2日、沖縄アリーナで開催された『RIZIN.36』。沖縄大会とあって、現地在住や出身の日本人ファイターが9名も集結した大会だった。
結果は1勝8敗。唯一の白星はキックボクシングマッチに出場した宮城寛克だけで、MMA勢は7戦7敗と全敗を喫した。神奈川出身ながら一時期沖縄に住んでいた“準地元派”の山本美憂も、大島沙緒里とのレスリングvs柔道の組み技出身対決を1-2のスプリットで落とし、唇を尖らせていた。
旗色の悪い沖縄勢とは対照的に、札幌在住の山本空良や石川県出身の村元友太郎ら雪国勢が活躍したのはなんという皮肉だろうか。いずれもどちらが勝つかわからないギリギリのマッチメークを組んだ裏返しともいえるが、これだけ黒星を重ねられると会場に集まったウチナンチュの声援も湿りがちになる。
コンビニよりも空手道場が多い? 沖縄の格闘技熱とは
格闘技版チーム沖縄のキャプテンというべき砂辺は、沖縄に総合格闘技の種を蒔いたパイオニアだ。昨年11月に初めて沖縄で開催された『RIZIN.32』では前田吉朗と18年ぶりに対戦し、敗れはしたものの存在感を大いに見せつけた。
今回も前売りチケットを360枚以上サバき、金額にして520万円と断トツの売り上げを記録する一方で、自身の試合時のパンツについたスポンサーフィーから半額の72万5000円を「復興支援貯金」に回すなど“社会に根ざした格闘技”を忘れることはなかった。それでも、勝負の世界は厳しい。試合後、砂辺は「俺は俺を諦めず、また闘う」と気丈に語った。
この大会に出場するために7年ぶりに復帰したBJは村元に2RTKO負けを喫した。試合後、もうすぐ沖縄に自前のジムをオープンさせるという43歳のベテランは「メチャクチャ悔しい」と唇を噛んだ。
「途中で“俺、勝てるんじゃないのか”と思ってからおかしくなった。自信が過信につながってしまった」
沖縄の格闘技熱は以前から沸騰している。そのベースとなる琉球空手の道場数は「コンビニの数より多い」と言われているほどで、小中学校には必ず空手を指導できる先生や用務員がいるという話を聞いたことがある。以前那覇を訪れたときには、複数の空手道場の看板が揚げられている通りを見かけた。
空手道場ほどではないにしろ、キックボクシングや総合格闘技のジムも多い。正確な計算をしたことはないが、大都市圏を除いた地方の都道府県の中で、格闘技のジムや道場の数はダントツに多いのではないか。半年に一度RIZINを開催できる体力は、地域に根ざした格闘技熱に支えられている。