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テニスPRESSBACK NUMBER
伊達公子と杉山愛が明かす“日本テニス界”への危機感「今の子は保証のない夢を追わない」「若さの勢いを使うべき時期って、絶対にある」
posted2022/07/02 17:01
text by
内田暁Akatsuki Uchida
photograph by
Takuya Sugiyama
日本テニス界の危機を感じる伊達と杉山を含め日本女子テニス界全盛期を知る8人が設立した『Japan Women’s Tennis Top50 Club』。約1年に及ぶミーティングで共有し合ったのは“テニス界への危機感”だった。なぜ日本では優秀なジュニアが世界で活躍できないのか――? 番組内に入りきらなかったエピソードや対談後に行った二人のインタビューを公開する(全2回の2回目/#1から続く)
「90年代に、もがき、もがきながら世界の上を目指して戦って当時トップ50にいた私たちがそれぞれ引退した今、何かできたらいいなという思いはセカンドキャリアが終わってから頭のどこかに常にあったんです」
6月末に発足を発表した「Japan Women’s Tennis Top50 Club(以下JWT50)」。その原点にある想いを、発起人の伊達公子は述懐した。絞り出すように繰り返す、「もがき、もがき」の言葉に、「次世代の選手たちに伝えたい」と願うものの本質が凝縮される。
その想いをカタチにするため、最初に伊達が声を掛けたのが、シングルス最高8位、ダブルス1位の杉山愛。昨年の1月のことだった。
「初めて知ることばかり」7人が共有した“葛藤と情熱”
現在も続く、WTA(女子テニス協会)のランキングシステムがツアーに導入されたのが、1975年11月のこと。以降、“世界ランキングトップ50”に入った日本人女子選手は、現役を除いて13人に上る。
その全員に伊達は声を掛け、会の趣旨を説明した。もちろん今では13人それぞれのライフスタイルがあり、テニスとの関わり方も異なる。そのなかから7名のレジェンドたちが、「是非に!」と賛同の声をあげた。
会の理事となったのは、伊達公子と杉山愛、そして指導者として最前線で活躍する神尾米。以下、浅越しのぶ、小畑沙織、長塚京子、中村藍子、森上亜希子(五十音順)が会員として名を連ねることとなった。
会のメンバーが固まってから今回の発足発表に至るまで、8名は毎月のようにリモートで打ち合わせを重ねたという。それは「初めて知ることばかり」と伊達が驚くほどに、各々が秘めてきた葛藤や悩み、テニスへの情熱を打ち明け、ぶつけ合う場となった。
毎回、笑いあり涙あり、時には思い出話に花を咲かせるなかで、徐々に“この会で何をやっていくのか”、“後進たちに何を伝えるべきか、伝えられるのか”の命題が浮かび上がり、磨きが掛けられていく。とりわけ際立ったのは、「8名もいるのに、誰一人として同じ順路を歩んではいない」という多様性。その事実を共有し、それぞれの足跡に抱く敬意が、会の土台として形成されていった。
「誰かが何かを否定することは、一切ないんです。『そんなことがあったんだ』『それも面白いね』という感じで、伊達さんをはじめみなさんが、私の言うことも尊重してくれる」
ミーティングの様子をそう語るのは、8名中、年齢では下から2番目の森上だ。