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テニスPRESSBACK NUMBER
伊達公子と杉山愛が明かす“日本テニス界”への危機感「今の子は保証のない夢を追わない」「若さの勢いを使うべき時期って、絶対にある」
text by
内田暁Akatsuki Uchida
photograph byTakuya Sugiyama
posted2022/07/02 17:01
日本女子テニス界を象徴するレジェンド、伊達公子氏と杉山愛氏の特別対談が実現した
「情報が溢れる現代で、今の子たちは保証がない夢を追いかけなくなっている。でも、保証がなくても突き進むからこそ“夢”なわけですよね。その現実のなかで、夢に突き進むためのヒントを何か与えてあげられればというのが純粋な思いです。JWT50には、これだけ個性の強い8人がいるんだから、誰かしら、自分に合うエッセンスを見つけられると思うんです」
この伊達の言葉に、杉山も自らの経験を重ねながら、同調する。
「私は本当に若い頃、『ダテックにできるなら、自分もできる』って思っていた。図々しいんですが、でもある意味、若さってバカさというか、知らないことを武器にできると思うんです。変に冷静で頭でっかちになるより、若さの勢いを使うべき時期って、絶対にあると思っていています」
杉山がそこまで若者たちの背を押すのは、テニスが「それだけ挑戦し甲斐のある世界」だからでもある。
「世界のテニスは、特に女子は他のスポーツに比べて賞金も恵まれています。私の世代より、今は3~4倍になっていることも考えれば、夢要素だけでなく仕事としても、トライし甲斐のある世界。そこに挑戦することで、テニスだけではなく、人間としても成長できると思います。ツアーは成長できる機会をたくさんもらえる場所なので、そういうのを経験して欲しいなと思うんですよね」
「私たちの言葉は、まだ熱を持っている」
その地に足を運ぶことで新たな道が見つかり、未知なる目的地を目指すことこそが、“旅”のだいご味でもある。その意味では、テニスの競技システムが“ツアー”と称されるのは、言い得て妙だ。
それほどまでに挑戦し甲斐のあるテニスの世界で、今回発足したJWT50の面々は、ほんの一握りの領域に到達した“成功者”である。ただそれぞれのバックグラウンドを子細に見れば、誰一人として同じ道は歩んでおらず、各々がそれぞれの栄冠と挫折も味わってきた。
だからこそ「面白いよね」と杉山は笑みをこぼし、伊達は「若い子たちには、テニスをやっていて良かったなと思える人生を送って欲しい」と言葉に深い願いを込める。
「私たちの言葉は、まだ熱を持っている」――。
伊達が宿したその熱は、同志たちの心にも火を灯した。やがては未来を担う世代へと、燃え広がることを願って。
〈#1から続く〉