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南野拓実の新天地「モナコ」意外と知らないマメ知識…“伊東純也の恩師”が覚醒のカギ、ライバルは?《王妃も縁ある高貴なクラブ》
text by
杉山孝Takashi Sugiyama
photograph byGetty Images
posted2022/06/29 17:02
リバプールでは充実した時間を過ごすも、出場機会が限られていた南野拓実。新天地モナコで輝きを放てるか
シーズンごとのリズムが継続されるなら、新シーズンは下り坂になるのか。加入する南野の中では期待と不安が入り混じっているかもしれないが、光明はある。
まずは、南野をモナコに招いたポール・ミチェルの存在だ。この夏に41歳になる若手のスポーツディレクター(SD)だが、すでに成功を収め、マンチェスター・ユナイテッドやチェルシーなど、プレミアクラブからの誘いの声が絶えない。
サウサンプトンでは、サディオ・マネやドゥシャン・タディッチをスカウトし、当地での功績には日本代表DF吉田麻也の獲得も含まれる。トッテナムに移っても辣腕を振るい続けたが、一番の「当たり」はのちのプレミアリーグ得点王、ソン・フンミンの獲得だろう。吉田、ソン・フンミンを招き、成功を収めたことからも、アジア人への偏見はないと考えていい。南野がレッドブル・ザルツブルクに所属していた時期には、同じ「レッドブル勢」のRBライプツィヒで働いていた。当然、情報はたんまりと手にしていたはずで、自信を持って1500万ユーロと言われる移籍金を準備したことだろう。
もうひとりのキーマンが、フィリップ・クレモン監督だ。元ベルギー代表で、引退後は母国で指導者としてキャリアを積んできた。多国籍軍のベルギークラブで、預かったひとりが伊東純也。シーズン途中に加入した伊東にすぐさまチャンスを与え、現在へとつながる道を開いた。日本人選手の、特に攻撃的なポジションでの起用にも、色眼鏡をかけて臨むことはないはずだ。
問題は、そのクレモン監督率いるチームに、どうやって南野が食い込むか、である。
レッドブル仕込みのメソッドを体験済み
シーズン途中に解任された前任のニコ・コバチ監督は、4-4-2や3-4-3など複数のフォーメーションを用いていたが、クレモン監督就任後は4バックをベースに、終盤は4-2-3-1に落ち着いた。ボールポゼッションは相手に譲るが、素早い攻守の切り替えでのショートカウンター、時にロングボールをうまく使って、一気呵成にゴール前へと人数をかけてなだれ込む。試合終盤に入っても、多くの選手がスプリントする姿を見せ続ける。
悪くない結果を出していたコバチ前監督が解任されたのは、選手との不仲よりも、ミチェルSDによるパフォーマンスディレクターの導入が要因だとも言われる。ヨーロッパリーグなどとの連戦を鑑み、フィットネス強化に異を唱えた指揮官よりも、ミチェルSDはフィジカル強化を選んだ、というわけだ。ミチェルSDも知るレッドブル勢のメソッドは、南野もザルツブルクで体験済み。その経験は、後押しになるだろうか。