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『マキバオー』の漫画家つの丸が明かした連載秘話「ディープとハルウララを見て…」話題を呼んだ『ウマ娘』コラボのきっかけは?
text by
屋城敦Atsushi Yashiro
photograph byShiro Miyake
posted2022/06/26 11:01
『マキバオー』作者つの丸氏に、連載当時の生活や、いま話題の『ウマ娘』などについて聞いた
こうして『みどりのマキバオー』の続編である、『たいようのマキバオー』が『週刊プレイボーイ』誌にて連載開始となった。
「『たいようのマキバオー』の連載にあたっては、特別大掛かりな準備をしたということはありません。作画の資料作りで高知に行ったくらいです。競馬場も、直接足を運んだのは地元の船橋と大井くらいですね。ほかの地方競馬場は他の人にお願いして写真を撮りに行ってもらっていました」
連載開始当時、モデルとなった高知競馬はハルウララブームが過ぎ去り氷河期を迎えていた。
「僕が取材で行った高知競馬場は、ハルウララ人気が終わってどん底の時代の真っただ中でした。建物内が『節電のため』に電気を消して薄暗いのに加えて、人もいなくて寂しさが助長されていましたし、馬券を買う人も少なく、募金で重賞レースの賞金を集めていたほどで、まさに“末期”でした。
今にも潰れそうな感じで、おかげでマンガとしては描きやすかったです。だから、連載している間は潰れないでくれよと思っていました。それがネット投票やナイター開催なども当たってV字どころではない回復ぶりで、今や大盛況ですから。わからないものだと思いました(笑)。当時から現在のような活況だったら、むしろ描きたいと思わなかったでしょうね」
10年近い長期連載…続きは「もう描かないと思います」
主人公は、前作の主人公ミドリマキバオーの妹マキバコの産駒で母や伯父そっくりの容姿をしたヒノデマキバオー。経営難にあえぐ高知競馬のため、ムリをして毎週のように出走を強いられ、負け続けていた。
「最初はずっと負けさせていたのですが、どこまで負け続けさせられるかというのは読者との我慢比べみたいなところはありました。僕は個人的に好きなのですが、読んでいる方はたまらなかったでしょうね。『なんだこの暗い話は』って。
それができたのは掲載誌(『週刊プレイボーイ』)が好きにやらせてくれたのが大きかったと思います。『少年ジャンプ』だったらそんなこと絶対できなかったですから。と言っても、編集部ももう少しハデな話を期待していたとは思いますが(笑)」
『少年ジャンプ』時代とは違い、アンケートの結果を気にすることなく自由にペンを振るう機会を得たつの丸は、途中掲載先を『週プレNEWS』に移しながらも連載を続ける。2016年11月に連載を終了した『たいようのマキバオー』および『たいようのマキバオーW』は、なんと『みどりのマキバオー』を遥かに超えて10年近くも続いたのだった。
「もう描き残したことはないでしょ、というくらい描き尽くしました。ファンの方からはまた『続きを描いてほしい』という声をいただくことはあるのですが、もう描かないと思います」
《#3につづく》