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競馬マンガの金字塔『みどりのマキバオー』はいかに生まれた? 作者つの丸が語るこだわり「悪役は作らない」「特定のモデル馬はいません」
posted2022/06/26 11:00
text by
屋城敦Atsushi Yashiro
photograph by
Shiro Miyake
“動物を主人公にしたスポーツのマンガ”が始まりだった
『みどりのマキバオー』の連載は1994年に始まった(『週刊少年ジャンプ』1994年50号)。その企画がスタートしたのは1993年。『モンモンモン』(1992年~93年連載)が終了してすぐに当時の担当編集者から提案を受けて構想を練り始め、1年近くかけて土台を作っていったという。
「もともと動物が好きで、スポーツを観るのも好きで。そこに競馬ものはどうだろうと提案されたんです。それなら、動物を主人公にしてスポーツのマンガを描ける。バッチリじゃないかと思って、それほど深く考えずにその案に飛びついたんですよ」
競馬については、GI競走で馬券を買う程度で、まったく知らなくはないがそこまでのめり込んでいたわけでもなかった。「でも、そこまで本格的な競馬ものにするつもりもなかったので、まあ何とかなると思って(笑)」
最初はギャグマンガだった。
「『モンモンモン』がギャグマンガだったので、とりあえずその路線から始めたんです。いずれレースに打って出ることを想定してはいましたが、『少年ジャンプ』では人気が出なければ10話で打ち切りになってしまうことも珍しくありません。最初は森をウロチョロさせながら、読者アンケートの内容次第でギャグでもシリアスでも、路線がどう変更になっても大丈夫なように“様子見”をしていたというわけです」
連載開始時、『少年ジャンプ』には『ドラゴンボール』や『SLAM DUNK』といった大人気連載がいくつもあり、その状況下でつの丸は読者のニーズを確認しながらストーリーの方向性を探っていく。
「連載会議には落ちたことがないんですよ、僕。だから企画には自信がありました。でも、編集部に認められたからと言って読者にもウケるとは限らない。それで初めから展開をガチガチに決めず、柔軟に対応していこうと思っていました」
結果として『モンモンモン』でも人気を博したギャグや下ネタといった要素をベースにしながら、競馬を舞台にした熱い戦いを描く物語へと舵が切られていく。
意識したのはリアルとファンタジーの“さじ加減”
主人公のミドリマキバオー(うんこたれ蔵)は、れっきとした血統を持つが、カバのような顔に犬と見紛うばかりの小柄な肉体という、珍妙な姿をした“白毛”のサラブレッド。体重も100キロほどしかなく、普通の騎手ではまともにまたがることもできない。そんな彼が周囲の立派な馬格をもったサラブレッドたちに交じって快進撃を続ける。
「特徴的な外見のキャラクターがいないと、絵面として退屈じゃないですか。だからまずは、主人公はかわいらしく目立つ姿にしようと思ってああいった姿形にしました。でも、全部が全部荒唐無稽になっても変なので、たれ蔵や妹のマキバコなど一部を除き他の馬は皆リアルな造形にしています。自分で言うのも何ですが、リアルとファンタジーのさじ加減がすごくうまくいったのが『マキバオー』だと思っています」